ソフトボールのアメリカ代表選手のリサは31歳という年齢もあり、引退を勧告される。一方、父親の会社で働くジョージは詐欺罪で訴えられ窮地に陥る。ふたりはリサの友人の紹介で知り合うが、そんな状況なので仲が進むわけもなく、リサはメジャーリーガーのマティと同棲をはじめるが、ジョージはリサのことを想うようになっていた…
『恋愛小説家』のジョージ・L・ブルックスが監督。よくまとまっているという印象。

 この映画で一番いいのはキャスティングかもしれない。まずリース・ウィザースプーンがすごく役にはまっている。どこがというのは難しいんだけれど、「スポーツウーマン」の雰囲気が非常に良く出ている。何がスポーツウーマンっぽいかというと、ちょっとした野暮ったさとか、筋肉質な感じとか、さばさばした感じとか、精悍な表情とか、女っぽくないわけではないんだけれど、ちょっと性別を越えた感じがあるところとか。

そしてポール・ラッドの人のいいお坊ちゃんぷりも、オーウェン・ウィルソンのおバカなメジャーリーガーっぷりも、まさにはまり役。

といういいキャスティングなのだけれど、その反面、どうしてこういう一般人ではないキャラクターを主人公たちに設定したのかはよく分からない。この映画の内容はといえば、挫折した男女が出会うというもので、別に主人公がソフトボールのアメリカ代表選手であったり、ワンマン社長の息子であったりする必要はないわけだ。まあ、そういう極端なキャラのほうが物語がわかりやすいということはあると思うが、分かりやすくしないと理解できないような複雑な物語ではまったくない。

しかし、そのように分かりやすくすることで方を抜いてみることができるというのはあるかもしれない。この主人公たちがあまりにリアルな人たちだと、観客がどうしても自分の生活にひきつけて考えてしまい、物語として楽しめなくなってしまう。リアルティがあり、それに没頭できる映画も面白いけれど、こういう日常とかけ離れているがゆえに、非日常に入り込めるこういう映画もいいものだ。

そして、設定的には非日常的なものでも、それぞれの考え方はわたしたちとなんら変わらないというのもいいところ。日常的ではないけれど、理解できるということがこういう映画では重要なのだろう。

そういう意味ではオーウェン・ウィルソンが演じたマティというのが実は非常に重要な役だということが分かる。このマティはプレイボーりだが、女の気持ちがまったく分からないおバカで、リサの気持ちもまったく理解しない。それは「有名人であるがゆえ」とも考えられるけれど、同時に「あーいるいるこういうやつ」とも思えるキャラクターだ。そして、映画の最後にその彼がちらりと成長なのか、別の面なのか、これまでとは違った面を見せる。

ここが観客の日常と非日常を結びつけるカギになっているのではないか。このマティの存在によってリサとジョージの関係もリアルに感じられ、物語全体がまとまる気がする。

そのような効果もあって非常によくまとまっているという印象をうける。コメディとしては物足りなさも残るが、2時間安心して非日常に浸れるというのはなかなかいいことだ。

2010年,アメリカ,116分
監督: ジェームズ・L・ブルックス
脚本: ジェームズ・L・ブルックス
撮影: ヤヌス・カミンスキー
音楽: ハンス・ジマー
出演: オーウェン・ウィルソン、キャスリン・ハーン、ジャック・ニコルソン、ポール・ラッド、リース・ウィザースプーン

 

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