オークランド・アスレチックスをワールド・シリーズまであと一歩のところまで導いたジェネラル・マネージャーのビリー・ビーン。しかし、貧乏球団のオーナーは主力を放出し、さらなる予算の削減を求めてくる。途方に暮れたビリーはトレードの相談に出かけたインディアンズの事務所で独自の理論を展開するピーターに出会う。彼の理論に従って、新たな評価基準で安い選手を雇いチームを立てなおそうとするが、スカウトや監督の反発にあう…
弱小球団を競合へと変貌させたGMを描いた実話の映画化。華やかなメジャーリーグの裏側を描いた人間ドラマ。

 ジェネラル・マネージャーというのは聞いたことはあっても実際に具体的にどのような仕事をしているかというのは意外に知らない。野球のチームにおいて人事権を握るということがどのようなことなのか、そしてそのGMによってチームがどう変わるのかを描いた作品といっていいだろう。

そして、野球の世界というのは長い歴史があり、アメリカでも日本でもその歴史で培われてきた不文律や閉鎖的な世界ならではのルールというものがある。この映画の序盤で老年に手の届きそうなスタッフたちが「あーでもないこーでもない」と話し合うのがその象徴だ。主人公のビリーは元メジャーリーガーでスカウトに嘱望されて入ったもののあまり活躍できなかった。その思いがこの業界を変えようという原動力になっているのだということは物語の前半で明らかになる。そして、強い反発にあいながらも大学を出たばかりのピーターをアシスタントにしてその反発に打ち勝ってゆくゆくは野球界をも変えていこうという物語だ。

この物語自体は面白い。小さくはあるけれど社会を変革していこうという人を描いた物語というのはなかなか面白いものが多く、これもそんな物語の一つだ。アスレチックスという小さな球団で始めたことがどう展開していくのかというのも気にあり、その点では最後の最後まで物語への興味は尽きない。

しかし、果たしてこれを映画に、しかも劇映画にする必要があったのだろうか?という強い疑問が映画を見終わって残った。この出来事が起きたのはたかだか10年前、ビリー・ビーンはまだ現役のGMであり、作ろうと思えばドキュメンタリーだって作れた(おそらくアメリカでは繰り返しTV向けなどに作られているだろう)。それをわざわざ劇映画にする必要があったのか。

ブラッド・ピットの演技はさすがで、まったく違和感もないし迫力もある。だから劇映画にして失敗したというわけではないと思う。しかし、せっかく劇映画にするのならもっとドラマティックにしても良かったのではないかという気がしてしまう。ピーターのアドバイスでビリーが連れてきた安い選手たちが最終的に活躍してチームが躍進するという物語なのだから、その選手たちが監督やファンの懸念を裏切って活躍するそのシーンがあってこそ盛り上がるのではないだろうか。

裏側だけで観るものがカタルシスを感じるくらいのドラマがあるのならいいのだが、裏側だけでそこまで感動できる話でもない。実際にドラマが展開しているのは表側であり、裏側の人達の行動が感動へとつながるのは表側でその行動が報われてこそなのではないか。表で起こっていることは事実として伝えるだけで、そのために裏側で何が起こっているのかを伝えるのが目的ならば、事実を緻密に描けるドキュメンタリーにしてくれたほうが私は良かった。あるいは原作を読めばそれでいいのかも知れないとも思った。
地味な話なだけにスターでも使わないと興味を持ってもらえないと思ったのかもしれず、まあその思惑はあたったわけだけれど、そんなに面白みは感じない映画だった。

2011年,アメリカ,133分
監督: ベネット・ミラー
原作: スタン・チャーヴィン、マイケル・ルイス
脚本: アーロン・ソーキン、スティーヴ・ザイリアン
撮影: ウォーリー・フィスター
音楽: マイケル・ダナ
出演: クリス・プラット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ブラッド・ピット、ロビン・ライト

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