しあわせのパン

 東京での生活につかれた「りえ」は「水縞くん」と北海道の湖の畔ツキウラで「カフェ“マーニ”」を開く。水縞くんの素朴なパンとりえさんの美味しいコーヒーが自慢で宿泊もできるこのカフェには遠方からのお客さんから近所の人までさまざまな人が訪れる。 冬には雪に覆われる北海道の田舎にカフェを開くという都会人が憧れるような生活を描いたハートウォーミング・ストーリー。食べ物へのこだわりはいい。

 子供の頃からずっと好きな絵本「月とマーニ」に出てくる初恋の少年マーにを探し続けるりえ。東京から北海道へと引越し「水縞くん」とカフェを開く。オープンから1年経った夏、そのカフェに東京から訳ありそうな一人の女性が泊まりにくる。そこには常連客の「ときおくん」も訪れていて…というようなエピソードが夏、秋、冬、と3つ連なるドラマ。

 舞台は湖畔の「ツキウラ」という町。水縞くんは季節の素材を入れたパンを手でこねて釜で焼く。りえさんは毎朝豆を手で挽いてコーヒーを淹れ、季節の野菜を使って料理をつくる。そのパンや料理はどれも美味しそうで、野菜が煮込まれている様子や水縞くんがパンをこねている手つき、薪窯で焼かれるパンの表情などが非常に美しく、それこそ素朴に「美味しそうだなぁ」と思う。

 というわけなので、物語としてはその美味しい食べ物に癒される人たちが3組登場するということになる。1組目は彼氏に旅行をどたキャンされた女性、2組目は妻に逃げられた夫とその娘、3組目は老夫婦。だが、この一つ一つのエピソードがうそ臭いというか、わかりやすいというか、ステレオタイプをなぞっているだけで今ひとつ魅力が感じられない。たとえステレオタイプをなぞったエピソード出会ってもその見せ方によっては十分魅力的になりうるのだが、この映画はそのステレオタイプなだれでもわかる物語にさらに説明を加えることで分り易すぎるものにしてしまっている。さらに言葉ではなく映像によって説明させようという試みもその映像が作り物っぽすぎてうそ臭くなってしまっている。

 導入から絵本が登場するので、ファンタジー的な物語なのかと思ったら、その通りで、それも子どもがわくわくするようなファンタジーと言うよりは大人の夢物語としてのファンタジーだという印象を受ける。「こんな大自然に囲まれてゆっくり生活できたらいいだろうなぁ」と思うけれど、あまりにその夢物語にあいすぎていてリアリティに欠け、多くの人は「困難で生活できるわきゃねぇよ」と斜に構えたツッコミをしたくなってしまうはずだ。

 まあでも、本当にこんなカフェ兼ちいさな宿があったらほっと出来るだろうし、いいだろうなと思う。そして、実際に日本のどこかにこんな場所はあるんだろうと思う。今の情報化社会だとこんないい宿があったら途端に人気が出て人が押しかけ、こんなゆったりとした時間は保てなくなってしまうんだろうけど。

 とまあ、また現実に戻ってしまったが、そんな「夢の様な場所」の話なのだから、もうちょっと観客の想像力をかきたてるような脚本だったらよかったなぁ。


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