脚本家のアルベルトは胸に痛みを覚えて、病院の救急外来に行く。入院することになった彼は、心臓発作で救急救命室に運ばれてきたアンジェロと同室に。なぜか気があった2人は、退院後にも合うことを約束。恋人と別れたアルベルトのことを心配するアンジェロは自分の家に滞在するように勧めるが…
死を予感させる病に直面した人々の感情や想いをユーモラスにしかし丹念に描いたヒューマンドラマ。

 父親も40歳の頃心臓病で亡くなったというアンジェロは、自分もそうなることを半ば予感し、発作で入院するとともに死を予感する。しかし、アルベルトはそんなアンジェロに希望をもたせようとする。アンジェロの方は明るく振る舞ってはいるが、仕事も行き詰まり、恋人との中もうまく行かず、病気とは無関係に生きる「意味」のようなものを失いつつあるように見える。そんな2人が互いに惹かれ、退院後も友情を育むようになる。

真面目な性格のアンジェロは、退院後の検査で絶望的な値がでたことをアルベルトにも家族にも明かさず、それ以降さらにアルベルトを自分の家族のように扱うようになる。アルベルトの方はくだらないことを喋ってばかりいるが、脚本家だけあって知識も豊富で、優れた観察眼とそれを表現する力もある。

この2人が惹かれ合い、物語を紡ぐことで描かれるのは何かといえば、まさに題名の通りの「ハート」の問題だ。アンジェロの問題は「心臓」にあり、アルベルトの問題は「心」にある。自分の問題をどうすることもできないアンジェロはアルベルトの問題を解決することで、自分が後に残してしまうことになる問題を解決しようとするわけだが、それは彼だけの問題ではなく、彼の家族やアルベルトの周囲の人々の「心」の問題でもあり、彼の思うように解決するものではない。

映画はそんな風にそれぞれの「ハート」が作用し合い、じわじわと進んでいく。時に響きあい、時に反発し合い、それによってみんなが少しずつ変わっていき、全体も変化していく。それが最終的にアンジェロの「ハート」の問題を解決できるのか否か、そこが肝になるわけだけれど、「こうあるべき」というよりは「こうなるんだろうなぁ」という結末に最後はいたり、まあそれはそれでいいというか、ふわりと終わる。その余韻が心地よい。

人生は思うようにはならないけれど、その思いは何かの形で周りの人たちに影響を与えていく、それは当たり前のことのはずだけれど、とかく自分の思うように周りを動かそうとか、こんなふうに思われたいとかそういう欲求が強くなりすぎて逆に孤独感を強めてしまう結果になることがある。それを戒めるというか、そんなことをしなくても周りを見ていれば自ずと自分の進む道は見えてくるし、周りにもいい影響を与えられるはずだというようなことを言われている気がした。

DATA
2009年,イタリア,104分
監督: フランチェスカ・アルキブージ
脚本: ウンベルト・コンタレッロ、フランチェスカ・アルキブージ
撮影: ファビオ・ザマリオン
音楽: バティスタ・レーナ
出演: アントニオ・アルバネーゼ、キム・ロッシ・スチュアート、フランチェスカ・イナウディ、ミカエラ・ラマツォッティ

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