サミュエル・L・ジャクソン in ブラック・ヴァンパイア

安っぽくはあるが、スリルもホラーも実現したこれぞB級映画!

Def by Temptation
1990年,アメリカ,95分
監督:ジェームズ・ボンド・三世
脚本:ジェームズ・ボンド・三世
撮影:アーネスト・R・ディッカーソン
音楽:ポール・ローレンス
出演:ジェームズ・ボンド・三世、サミュエル・L・ジャクソン、カディーム・ハーディソン、ビル・ナン

 ニューヨークのとあるバーの常連の女は夜な夜な男を引っ掛けてはその男を殺害していた。牧師志望のジョエルは友人のKを頼ってニューヨークにやってくる。その夜、バーでその女と出会い、意気投合する。その女は実はジョエルをずっと狙っていた…
 ジェームズ・ボンド・三世監督・脚本・主演によるB級サスペンス・ホラー。安っぽいが見ごたえはなかなか。

 この“女”は生き血を吸ういわゆる“ヴァンパイア”ではないわけで、この邦題はどうかと思うが、まあそれはおいておいて、この“女”が男をだまくらかして殺してしまったり、破滅させてしまったりという序盤の展開はなかなか面白く、そして恐ろしい。

 そして、主人公のジョエルがニューヨークにやってくるタイミングでジョエルの友人のKが女と知り合うという、わかりやすいけれどその後の展開に期待を抱かせるプロットもうまいし、その“女”が男を引っ掛けるバーにいつも居合わせるいい加減な男の存在も思わせぶりでいい。つまり、決してよく出来たプロットではないのだけれど、それなりのスリルとそれなりの魅力があるということだ。

 そして終盤はというと、凝った特殊メイクや特撮、非現実的な展開、宗教的モチーフと盛りだくさんになる。どれもこれも安っぽくはあるのだけれど、この作品の世界観にはあっているし、90年という製作年を考えると、それなりにいい出来ではないかと思う。

 総じて見ると、これぞまさにB級映画!という印象。いまやビッグ・ネームのサミュエル・L・ジャクソンが出てはいるが、まだブレイク前だし、予算はかけず、題材もバカバカしい。しかし宗教的なテーマを扱ったりして単なるバカ映画というわけではない。中盤、Kがジョエルにニューヨークについて語るところなどは少々哲学的ですらある。

 ジェームズ・ボンド・三世も子役出身でこの作品を最後に映画界を去った。その後何をしているのかとか、なぜ映画界を去ったのかはわからないが、これだけの作品を作れるのだからちょっと残念という気もする。子役は大成しないというのは通説だが、それはあくまでも俳優としての話で、監督や脚本という別の職掌ではその限りではないのかもしれない。まあ言っても仕方のないことだが…

 そして、ブラック・ムービーとしても十分に映画史の1ページに加えうる作品だ。ジェームズ・ボンド三世もサミュエル・L・ジャクソンも重要な脇役で出演しているビル・ナンもスパイク・リー監督の『スクール・デイズ』の出演者であり、この映画には完全に黒人しか出演していない。人種に対する何らかの主張がなされているわけではないが、いわゆる“普通の”映画との違いがこの映画がまぎれもなく黒人映画であることを主張しているように思える。

 B級スリラーファンか黒人映画ファンなら観ても損はない作品だろう。

恐怖のワニ人間

The Alligator People
1959年,アメリカ,74分
監督:ロイ・デル・ルース
脚本:オーヴィル・H・ハンプトン
撮影:カール・ストラス
音楽:アーヴィング・ガーツ
出演:ジョージ・マクレディ、ロン・チェイニー・Jr、ビヴァリー・ガーランド

 精神科医がたまたま看護婦の心に潜む恐ろしい記憶を探り当ててしまった。彼が友人の医師にも聞かせたその秘密は、彼女は一人の男と結婚したが、新婚旅行中に電報を見た彼が忽然と姿を消し待ったというものだった。果たして彼のみに何が起こったのか…
 このころのアメリカの流行のB級恐怖映画。サイレント時代からいわゆるB級の映画をとってきたロイ・デル・ルースの晩年の作品であり、『エクソシスト』や『ゴッドファーザー』などで活躍することになる特殊メイクのディック・スミスがメイクに名を連ねていることにも注目。

 この監督さんはよく知らないし、代表作がなんだかもわかりませんが、フィルモグラフィーを見ると、100本近い監督作品があります。きらびやかな経歴を誇る監督がいる一方でこういう地味な仕事をしている監督もいるということです。それこそがハリウッドというような気がします。
 映画のほうはというと、完全に古典的な恐怖映画(タイトルの頭に「恐怖の」とついている時点で怪しい)で、それはまさに時代を象徴しています。50年代後半から60年代にかけてはこういった恐怖映画が多く作られた時代で、「ホラー映画」と呼ばれる70年代以降の作品を見てしまうと、子供だましにしか見えず、とても恐怖を覚えるのは難しいですが、そのチープな味わいが好きだというB級映画ファンは多いはず。
 その場合、どうしても笑いのほうに近づいてしまいますが、この映画も最後のオチの部分ではついつい笑ってしまいました。やっているほうは大真面目なので、笑っては失礼なのですが、意外な展開だった上に全く怖さがなかったもので。
 えー、映画史的にはこういう作品も重要で(この作品が重要というわけではないけれど)、1本くらいこんなん見てても罰は当たらないかなという気がします。もしかしたら、心の底に隠れていたマニア心をくすぐられるかもしれないし…

修羅雪姫

1973年,日本,97分
監督:藤田敏八
原作:小池一夫、上村一夫
脚本:長田紀夫
撮影:田村正毅
音楽:平尾昌晃
出演:梶芽衣子、赤座美代子、中田喜子、黒沢年男

 明治6年、八王子の監獄で鹿島小夜は娘を産み落とす。娘の名は雪、小夜は雪に自分の仇をとり、恨みを晴らして暮れといいながら死んだ。時はたち、大人になった雪は蛇の目傘に仕込んだドスで人を斬る見事な暗殺者になっていた。そして彼女は母の仇を捜し求める…
 当時連載されていたコミックの映画化。とにもかくにも全体に徹底されているB級テイストがたまらない。もしかしたら、コメディかも。

 見た人には何を言わなくてもわかってもらえる。しかし見た人はあまりいないだろうということでちょっと説明しつつレビューしていきましょう。
 最初人が殺される場面の血飛沫の激しさ、そしてその血の色の鮮やか過ぎるところ。これを見て、なんか安っぽいなと思ってしまうのが素直な反応。しかしこの映画、その安っぽさを逆手にとってというか図に乗ってというか、とにかく血飛沫血飛沫血飛沫。とにかく飛び散る血飛沫。大量の血。しかし決して生々しくないのはその血があまりににせものっぽいから。伴蔵の血で染まった海の赤さ。「そんなに赤くならねーだろ、おい!」
 いとも簡単に血飛沫が飛び、急所をついてないのに糸も簡単に死んでしまう人たち。一太刀で出血多量にしてしまう雪の剣がすごいのか? そんなはずはないのですが、辻褄を合わせるにはそれくらいしか説明のできないすごさ。そのような映画の作り物じみさ、狙った過剰さ。そこに気づくと、映画の後半はひたすら忍び笑いの時間になります。そしてそのクライマックスは北浜おこの。これは見た人だけが共有できる思い出し笑い。
 こういうテイストの映画は日本にはあまりない。全くないわけではないですが、妙に茶化してしまったりして、こんなくそまじめなようでいて目茶目茶おかしいという映画はなかなかないのです。あるとすれば、60年代から70年代の埋もれた映画でしょう。京マチ子主演の『黒蜥蜴』などもかなり爆笑映画でした。最近では『シベ超』『DOA』といったところが、そんな映画の代表でしょう。うわさでは『幻の湖』という名作もあるらしい。そのような「バカ映画」といってしまうと語弊がありますが、そんな映画がはわたしは好き。

ゴッド・ギャンブラー/賭神伝説

賭神3之少年賭神
God of Gamblers 3 : The Early Stage
1997年,香港,110分
監督:バリー・ウォン
脚本:バリー・ウォン
音楽:カム・プイ・タット、ラオ・ジョー・タク
出演:レオン・ライ、アニタ・ユン、フランシス・ン、チョウ・ヨンファ

 ギャンブラーとしての才能を開花させたコウ・チャンはボスのもとで着実に勝てるようになっていく。その賭け事のいかさまや脅しや暴力が横行する世界で、コウ・チャンは確実に地位を気づきつつあるように見えた。そんななか「賭神」を決める大会がマカオで開催されることになった。
 チョウ・ヨンファ主演のシリーズ「ゴッド・ギャンブラー」の主役コウ・チャンの若かりし日々を描いた作品。

 最後、「どうしてチョウ・ヨンファ?」と思ったら、続編だったのね。続編というか、回顧篇という感じですが。とりあえず、このシリーズは1989年に撮られた「ゴッド・ギャンブラー」というやつだそうです。それから「ゴッド・ギャンブラー2」、「ゴッド・ギャンブラー完結編」と来て、4作目だけど「3」。なぜ?
 まあ、そんなことはいいとして映画ですが、予想外に展開力のあるストーリーで、けっこう先の展開が気になったりしました。全体的にはやはり安めのつくりで、特にアクションシーンなんかは香港映画とは思えない安っぽさ。キックの半分以上は明らかにあたっていないと分かってしまう。だから、アクションシーンは見どころではない。
 そして、安さでいえば、いくらでもけちをつけるところはあります。しかし、それは見てのお楽しみ、「世界選手権」というあたりがなかなか素敵。地域的な偏りとか、公正を期するといいながら、怪しげな人がするする入っていってたりとか、いろいろです。

 B級な映画はかなり取り上げていることもあり、最近どうも手抜きっぽい感じもあり、なかなか書くこともありませんが、こういう安映画はさっと見て、さっと楽しんで、さっと忘れるのが一番。現に、見てまだ半日も経っていませんが、だいぶ忘れてきています。でも、そうすると、もう1回見てもまるで初めてのように楽しめるという利点もあります。
 うーん、なんだかシリーズのほかのも見たくなってきたなぁ…

フォーエバー・フィーバー

Forever Fever
1998年,シンガポール,95分
監督:グレン・ゴーイ
脚本:グレン・ゴーイ
撮影:ブライアン・ブレニー
音楽:ガイ・クロス
出演:エイドリアン・バン、マデリン・タン、アナベル・フランシス

 1970年代のシンガポール、スーパーマーケットで働くホックはブルース・リーとバイクに夢中。毎日遅刻しながらも地道に働き、3000ドルのバイクをいつか買うことを夢見ていた。しかしある日たまたま見に行った映画「フィーバー」に出ていたトラボルタに見せられ、ダンスに夢中になってしまった。
 とにかく何でも詰め込んだB級娯楽映画。この安っぽさがたまらない。

 面白いような面白くないような。しかし、これは面白いのだとしておきましょう。とにかく安く面白く映画を作る。これがすべてといっていい。「サタデー・ナイトフィーバー」と思われる映画に出ているジョン・トラボルタと思われる人がトラボルタにちっとも似ていないことはともかくとして、すべてが安っぽすぎる。そして物語が陳腐すぎる。それでもこの映画を面白くしているのはその安っぽいB級テイストに加えて、とにかくいろいろな要素が詰め込まれていること。
 それはもう、とにかくなんでもかんでも詰め込んでやれという意気込み。そもそもブルース・リーとサタデーナイト・フィーバーを組み合わせようという発想自体無理がある上に、家族の話や恋の話やなにやら詰め込めるものなら何でも詰め込んじまえという感じ。さらに、それだけ詰め込んだにもかかわらず全く複雑にならないプロット。おそろしい…
 安っぽさでいえば、車で当てただけでじてんしゃがばらばらになるとか、殴り合いのシーンで明らかに当たってないとか、そもそも出てくる人みんなの衣装が安っぽすぎるとか、いろいろあります。しかし一番すごいのは舞台装置の少なさ。同じ場所で撮ってばかりいます。おそらく撮影期間も短かったのでしょう。同じ場所のシーンは同じ時に撮ってしまえという発想が感じられます。主人公が3時間かけてパーマをかけ、ディスコに行った次の日にスーパーに働きに出るときにはすっかりと髪型が戻っていたりもします。怪奇現象だ… こういう単純なミス(おそらくスクリプトのミス)が起こってしまうのが本当のB級映画なのです。狙って作ったB級映画は実際はちゃんと作っているのでこういうミスはあまりありません。だからこの映画は真正のB級映画ということです。すごい!

アイドル・ハンズ ぼくの右手は殺人鬼!?

Idle Hands
1999年,アメリカ,92分
監督:ロッドマン・フレンダー
脚本:テリー・ヒューズ、ロン・ミルバウアー
撮影:クリストファー・バッファ
音楽:グレーム・レヴェル
出演:デヴォン・サワセス・グリーン、エルデン・ラトリフ、ジェシカ・アルバ

 マリファナを吸いながら怠惰な生活を送る高校生のアントンの家で、両親が惨殺される。実は街では連続殺人事件が起こっていた。しかしアントンはそのことも知らず、両親が殺されたことにも気づかず、友達の家に遊びに行ってしまう。そして帰ってきて両親が殺されていることに気づいて…
 アメリカではヒットを飛ばし、デヴォン・サワを一躍若手人気俳優へと押し上げたB級ホラーコメディ。確かに安っぽいけど面白い。

 序盤はあくまでB級で、安さ満開。オープニングの妙におどろおどろしいイメージビデオみたいのから、両親の惨殺シーン辺りは普通にホラー映画なのかと思わせつつ、それをすっかりひっくり返してしまうところがいい。ホラーのグロテスクさとB級コメディのばかばかしさの混ぜ具合がちょうどいいというところ。とくにアントンの友だち2人が異常にいい。まさにグロさとバカさのバランスをとる存在として、映画の要になっています。あとは、右手。CGなんかを使った特撮の右手ではなくて、デヴォン・サワ自身がやっているアナログな特撮?の右手。これだけで演技がうまいということはできないけれど、それはそれで特殊な演技力だと思う。
 日本の配給会社が二の足を踏んだのは、きっと全く有名な人がいない(本当にひとりもいない)のと、日本ではヒットしにくいB級コメディだということだったのでしょうが、これは公開してもよかったかも、と思う。夏休みの夜にはぴったりなどーでもいい感じです。B級入門にもいいかもしれない。これがダメな人はきっとB級映画は全部ダメな人だと思います。

ロクスベリー・ナイト・フィーバー

A Night at the Roxbury
1998年,アメリカ,82分
監督:ジョン・フォーテンベリー
脚本:スティーヴ・コーレン、クリス・カッテン、ウィル・フェレル
撮影:フランシス・ケニー
音楽:デヴィッド・キティ
出演:ウィル・フェレル、クリス・カッテン、ダン・ヘダヤ、リチャード・グリエコ、マイケル・クラーク・ダンカン

 造花屋のさえないダグとスティーヴの2人の息子は父親の店を手伝いながら夜はクラブ通い。しかし、とにかくさえないしお金もないので、有名なクラブには入ることすら出来ない。彼らの憧れはロクスベリーという有名クラブ。将来そんなクラブのマネージャーになるのが夢だった。
 ウィル・フェレルとクリス・カッテンの2人が脚本と主演をした青春コメディ。この2人はどうもサタデー・ナイト・ライブ(SNL)系のコメディアンらしい。ウィル・フェレルは「オースティン・パワーズ・デラックス」にも出てました。

 若いコメディアンが映画を作る。これはよくある話。特にSNL系の人は古くは「ブルース・ブラザーズ」、最近では「ウェインズ・ワールド」に「オースティン・パワーズ」もある意味ではそう。しかし、この試みはなかなか成功しない。特に日本人のセンスではなかなか受け入れがたいものが多い。この作品もそんな感じ。時代とのギャップとナンセンスさを使って笑いを作り出すというやり方、しかも時代のはやり物をネタとして使っているので、日本人には非常に分かりにくい。
 そもそも、スターとして登場したリチャード・グリエコも決してメジャーではない。この人は大ヒットドラマ「21ジャンプ・ストリート」でジョニー・デップとともに人気者だったらしい。このドラマはこのメルマガでは「ロックド・アウト」というビデオ化されたもので紹介しましたが、覚えている人はほとんどいないでしょう。このビデオでは、ブラッド・ピットがゲスト出演していました。でもリチャード・グリエコのことはまったく覚えていない。
 というとてもマイナーな感じの映画。でも、決してみていていらいらするとかむかつくとかいうつまらなさはなく、たいして面白くもないけど、つまらなくもないという程度。おそらくこの2人はコンビでSNLではそれなりの人気があって、コーナー持ってて…、なのでしょう。きっとそっちのほうが面白いんだろうな。
 あとは、ロクスベリーの入り口の人は「グリーン・マイル」の人だった。オーナーは「アナライズ・ミー」の人だった。など、見たことある人多数出演という感じ。
 こう書いてみると、結構B級の楽しさ満載の映画なのかもしれない。

ビッグ・トラブル

Big Trouble
1986年,アメリカ,89分
監督:ジョン・カサヴェテス
脚本:アンドリュー・バーグマン、ウォーレン・ボーグル
撮影:ビル・バトラー
音楽:ビル・コンティ
出演:ピーター・フォーク、アラン・アーキン、ビヴァリー・タンジェロ、ヴァレリー・カーティン

 保険会社に勤めるレナードには、三つ子の息子たちがいる。しかも三人そろって大学へ進学、妻は三人をどうしてもエール大学に行かせたい。でも、レナードの給料ではとても無理。そんなレナードのところに奇妙な保険の依頼が…
 不思議なテンポで進んでいく、シュールなコメディ映画。まさにこれぞB級!といった味わいで、チープさと思い切りのよさが映画中にあふれている。この映画が気にいらない人は、B級映画とは肌が合わないということでしょう…

 最初の三つ子という設定からして不思議で、さらに音楽の才能があってどうしてもエール大学に行かなきゃならないという動機付けもよくわからない。しかし、映画が始まってしまうと、そんなことに疑問をはさませないスピード感を作り出すだけの才能をカサヴェテスは持っている。
 この映画のB級さ加減はすごくいい。金庫のつくりから、テロリストの登場の仕方まで映画のプロット自体が相当B級だが、それよりもどうにも笑ってしまったのが部長をさらって暗い道で止まり、レナードとスチーブ(この字幕もかなりB級)が歩き回る場面で、明らかに照明が人物を追っているところ。真っ暗な道で、人が動くと明るい部分も動くというなんともチープなつくり。現実に似せようという努力はまったく感じられないところがいい。
 というわけで、B級映画のよさを遺憾なく発揮した作品でした。

キラー・クロコダイル 怒りの逆襲

Killer Crocodile 2
1990年,イタリア,87分
監督:ジアネット・デロッシ
脚本:ジアネット・デロッシ
撮影:ジョバンニ・バーガーミニ
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:デブラ・カー、アンソニー・クレンナ、トーマス・ムーア

 密林に現れた巨大ワニ(クロコダイル)を退治する二人の男を描いた前作から数年後、再びやつが現れた。  
いわゆるジョーズ系パニック映画のバリエーション。驚きなのはイタリア映画ということ。しかし、セリフは英語、出てくる人もドウみてもアメリカ人。ワニは手の込んだ張りぼて。このあたりがB級映画らしくて非常にいい。B級映画好きの人にはお勧め。普通の映画好きの人には薦めません。

 すべての仕掛けがわかりやすいところが非常にB級映画らしくていい。川を泳いでいるワニが丸太のように微動だにしなかったり、アングルによって明らかにワニの大きさが違っていたり、これぞB級!というつくりです。
 そして、もうひとつB級なところは映画のつくり。特に登場人物の感情を表すときに使われるのがほとんど顔のアップという非常にわかりやすい構成。黒人の船頭が欲情するときに顔のアップと、視線の先にある尻のアップを交互に見せるところなんかがその典型。
 「映画にA級もB級もない」などといわれますが、こういう映画を見ると、普通の映画の駄作といわゆる「B級映画」との違いがわかります。

0086笑いの番号

The Nude Bomb
1980年,アメリカ,94分
監督:クライヴ・ドナー
原作:メル・ブルックス、バック・ヘンリー
脚本:アーニ・サルタン
撮影:ハリー・L・ウルフ
音楽:ラロ・シフリン
出演:ドン・アダムス、シルヴィア・クリステル、ヴィットリオ・ガスマン、ロンダ・フレミング、パメラ・ヘンズリー

 あるテロリストが新型の爆弾を開発。それは人体には傷をつけず、衣服だけを破壊するというものだった。そのような地球の危機(?)に引退したはずの諜報部員(86号)マクスウェル・スマートが呼び戻された。
 スパイもの(スパイ大作戦+007という感じ)をパロったドタバタコメディ。バカバカしいので、真面目な人は見てはいけない。B級コメディの中では名作のひとつと言える。 

 なんてことはないのだけれど、笑えるところはなかなかある。しかもまったくバカバカしい。結末もわかりきっているし、見終わったら「あー、時間を無駄にした」と思うのも目に見えているのに、ついつい最後まで見てしまう。やはり細かい逆の数々が目を話させない秘訣。この映画の中で好きなのは13号。
 しかし、批評もしにくいです。何も書くことがないのでね。何も考えずに席に座って(映画館だったら)、ただただ笑って、映画館をでたらすっきり忘れる。これが正しいB級コメディの見方でしょう。どんな映画かなんてことはどうでもいい。問題はどれだけ笑えるかってことだけ。これなら多分、10~20回くらい笑えるかな。そんなもの。
 「それ行けスマート/世界一の無責任スパイ」(アメリカテレビ放映、ビデオ廃盤)という続編もある。