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悲しみよこんにちは

2003/1/7
Bonjour Tristesse
1957年,イギリス=アメリカ,94分

監督
オットー・プレミンジャー
原作
フランソワーズ・サガン
脚本
アーサー・ローレンツ
撮影
ジョルジュ・ペリナール
音楽
ジョルジュ・オーリック
出演
ジーン・セバーグ
デヴィッド・ニーヴン
デボラ・カー
ミレーヌ・ドモンジョ
preview
 父親レイモンとパーティーに出かける17歳の少女セシール、やさしくおおらかな父親とともに楽しいときを送ってるはずの彼女だったが、言い寄ってくる男たちにもまったく乗り気がしない。それは彼女が1年ほど前の夏の経験がもたらしたものだった。その夏、セシールは父と父親の恋人エルザと夏のリヴィエラで楽しいヴァカンスを楽しんでいたのだが、その楽しいはずのヴァカンスがいつしかおかしな方向に行ってしまう…
 当時ベストセラー小説となっていたフランソワーズ・サガンの小説(1952年、サガンが18歳のときの作品)をハリウッドが映画化。主人公のセシールを演じたジーン・セバーグ(こちらも当時18歳、2作目の映画出演)のショートカットの髪型が「セシール・カット」として流行したということでも話題を呼んだ。
review
 原作を読んだのは10年以上も前、お話も大方忘れてしまったところだったので、とても新鮮に見ることができた作品。未知の物語としてみると、この映画の展開は非常にミステリアスというか、サスペンス的な展開で面白い。サスペンスではないので、結末は途中で見えてくるものの、それでも現在(白黒)と過去(カラー)を断絶させたものが何なのか、という興味によって観客をひきつけておくやり方はなかなかうまい。
 作り方としてはなんとなくヒッチコックぽい感じがして、いかにもハリウッドのつくりという感じ。あくまでなんとなくなのでどのへんがということは出来ませんが、クライマックスへのもって行きかたとか、登場人物のキャラクターなんかがヒッチコックっぽい。この時代の流行だったのかもしれませんが。
 登場人物のキャラクターといえば、ここに登場する人たちや場所や出来事はなんだかアメリカ人がイメージするフランスという感じ。日本でも大してイメージは変わらなかったとは思いますが、言うなれば「おフランス」な感じですね。凱旋門やらエッフェル塔やらといういかにもフランスフランスしたものが出てこなかったのがせめてもの救いで、他はフランスっぽいもので満たされています。

 映画としてこの映画を特徴付けるのは、現在を白黒、過去をカラーとして描き分けたやり方で、もちろんこれはセシールの心理の表われなわけですが、心理を反映することによって過去=白黒、現在=カラーというイメージを反転させたところは、当時では新しかったのでしょう。何せ映画が本格的にカラー化され始めたのは、カラーネガフィルムが実用化された1952年あたりからです。
 ショートカットの女性がある種のアイドルとして注目されるのもジーン・セバーグからという感じがするので(あくまでイメージ)、この映画はかなり新しい要素をたっぷり盛り込んだ映画だったということはいえるのでしょう。
 しかし、そのようなことは認めて、今見ても面白いということも行った上で、今見るとあまり新鮮味はないということはいえます。当時は新しいものであったとしても時代を超えて新しさを獲得することはなかったと言わざるを得ないでしょう。もちろん、この映画がそれ以後、似た映画がたくさん出てきたことは確かだとは思いますが、それはこの映画が新しいものを創造したからではなく、時代の最先端にあるものをいち早くキャッチしたからなのでしょう。
 当時の時代の空気(あるいは先取りされた60年代)というものをいま味わおうとするならば、とてもいい映画だと思います。ソウル・バス(ヒッチコックの『めまい』や『サイコ』、キューブリックの『スパルタカス』などのタイトルを制作したタイトルデザイナー)が作ったタイトルもまさにという感じでいいですね。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: イギリス

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