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江戸は青空

2003/1/12
1958年,日本,61分

監督
西山正輝
原作
山本周五郎
脚本
久里子亭
撮影
本田省三
音楽
飯田三郎
出演
林成年
沢村貞子
中村玉緒
島田隆三
月田昌也
preview
 天保年間、幕府の引き締めや飢饉によって庶民の生活は日に日に苦しくなる一方。そんなある日、貧乏長屋の一角にある飲み屋でけちんぼ一家として知られるおかつの家のことを聞いた泥棒が、その晩その家に泥棒に入る。しかしまだ起きていたおかつは泥棒を家に招きいれ、お金をためている理由を泥棒に得々と語って聞かせた…
 山本周五郎の「かあちゃん」の映画化作品。時代設定は江戸ながら、テーマ的には時代を超えて通じるもので、今見ても十分鑑賞に耐える物語性を持っている。脚本は市川崑と和田夏十、市川崑の手で『かあちゃん』として2001年に再映画化された。
review
 画面をさらりと見ていると、沢村貞子がひとり奮闘という感じです。一つ一つの所作といい、台詞回しといい、うまい役者は違うものだと思ってしまう。全体的にはほのぼのとした映画だけれど、沢村貞子が登場すると画面がぐっとしまり、説得力を持ってくる。
 テーマや物語といった点はとてもオーソドックスで、いかにも山本周五郎という感じだけれど、細部はなかなか綿密に計算されていてよい。中村玉緒が「一日前に知ったばかりのあなたよりかあちゃんを信じる」とか何とか言うあたりの、兄弟とかあちゃんの心理の描写はなかなか秀逸。直接言葉で語らずに、一種の間によって駆け引きや暗黙の了解といったものを伝えるのがとてもうまい。
 言外の意味とは、言葉によっては伝わらないものなので、確実性という点ではまったく頼りにならない。しかし、観るものをうまく誘導していけば、かなりはっきりと行間を読ませることは出来るはずだ。この映画ではその行間を読ませるということが局所的ながら成功しているのもいい。
 この綿密さはこの作品が西山監督にとって初監督作品であったということも理由としてあるかもしれない。最初の一本を作るときにはかなり力が入るだろうし、完璧を求めるものだろう。だから、細かいところまで綿密に作る。映画の職人として映画に欠損のないようにしっかりと作る。そのような意識がこの映画からは伝わってくる。
 それは、あるときには意外性のない退屈な映画になってしまうという面もあるが、計算しつくされた映像と音は完全なる調和を生み出すこともある。この映画は完全なる調和というよりは、規制の枠にぴたりとは待った几帳面な映画という印象だけれど、決して退屈ではない。序盤で、セリフがかぶさって聞こえにくくならないように登場人物たちがきっかり一人ずつしかしゃべらないという場面などは、ちょっとやりすぎというか作り物じみた感じになってしまっているのが惜しい。

 市川崑が../0807/10p.htmlという映画を撮ってはじめて顧みられたともいえるような映画であり、名作といえるものではないけれど、時代というのはこのような映画の集合によって彩られ、歴史というのはこのような映画の集積によって形作られていくものなのだから、こんな映画が見られる機会があるというのはうれしいことだ。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本50年代以前

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