ビッグ・リボウスキ
2003/1/26
The Big Lebowski
1998年,アメリカ,117分
- 監督
- ジョエル・コーエン
- 脚本
- イーサン・コーエン
- ジョエル・コーエン
- 撮影
- ロジャー・ディーキンス
- 音楽
- カーター・バーウェル
- 出演
- ジェフ・ブリッジス
- ジョン・グッドマン
- スティーヴ・ブシェミ
- ジュリアン・ムーア
- デヴィッド・ハドルストン
- ピーター・ストーメア
- ジョン・タトゥーロ
- ベン・ギャザラ
仕事もせずブラブラしている“デュード”ことジェフ・リボウスキが買い物をして家に帰ると、いきなりギャングらしき2人組に襲われた。結局それは同じ名前で金持ちのリボウスキと間違えられたことが判明したが、デュードはその2人組に汚された敷物を金持ちのリボウスキにしてもらおうとその家に行った。そこから彼は厄介な事態に巻き込まれていく。
デュードのボウリング仲間ウォルター(ジョン・グッドマン)がかなりいい味出しているまさにコーエン兄弟らしい奇怪な作品。
私はこれまでのコーエン兄弟の作品の中ではこれが一番好きです。見ている間は物語の展開と登場するキャラの濃さに引き込まれ、最後まで見てしまうのだけれど、終わってみると結局どんな話だったのかちっともわからない。だからストーリーの話はまったくしませず、細かいところばかり話すことにしましょう。
まず、この映画で実質的な主人公といえるのはジョン・グッドマンだと私は思うわけですが、この映画のジョン・グッドマンはこの映画以前にもこの映画以後にも演じていないような得意な役を演じている。そもそも角刈りとかひげとか、いつもとは違う顔で映画に登場する。「これが本当に優しいパパを演じさせたら全米一のジョン・グッドマンなのか?」という気持ちにさえなってしまう。そして役回りはベトナムを今も忘れられない退役軍人。この映画が冒頭に父ブッシュの演説のテレビ放送が挿入されたりして湾岸戦争というものを意識的に使っていることを考えると、これはなかなか意味深。ベトナム戦争で心の傷を負った(と思われる)ウォルターが湾岸戦争のことには一切触れないのもコーエン兄弟流のシニカルな社会的メッセージであると見ることもできるのかもしれない。
そのような社会的な分析なんかをしたりも出来るけれど、この映画の魅力はもっともっと細かいところ。たとえば、ビッグ・リボウスキの秘書ブラントの鼻ヒクヒク。気づかない人も多いかもしれないけれど、この鼻ヒクヒクは微妙な動きながら画面の雰囲気を支配して、いい効果を上げている。この鼻ヒクヒクが出来る人を狙ってキャスティングしたんだろうか…?
私がこの映画で一番好きなキャラクターはスティーヴ・ブシェミ演じるドニー。この映画は物語が大きく転換するときにはその変わり目に必ずボウリングのシーンが挿入され、それはブシェミが投げるところで始まる。そしてそれは必ずストライク。しかし、最後の回だけは一本残ってしまう。この一本残りはそれまでが順調なストライクだっただけに大きな違和感を残す。
このような違和感によって観客の心理を操作するというのはよく使われる手ではあるけれど、それをボウリングによってやるというのがコーエン兄弟のコーエン兄弟らしさであり、それをスティーヴ・ブシェミでやるというのが非常に効果的。あの顔、あの動き、そしてボウリング。
なので、出番は少ないけれど、ブシェミが一番好きなのです。
ブシェミ、グッドマン、タトゥーロ、変なキャラを作らせたら世界でも指折りのコーエン兄弟が変なキャラを集めて映画を撮ったら面白くないわけがない。それがこの映画。生理的に受け付けない人はいるかもしれないけど…