ウェルカム! ヘヴン
2003/1/28
Sin Noticias de Dios
2001年,スペイン=フランス=イタリア,108分
- 監督
- アウグスティン・ディアス・ヤネス
- 脚本
- アウグスティン・ディアス・ヤネス
- 撮影
- パコ・フェメニア
- 音楽
- ベルナルド・ボネッツィ
- 出演
- ヴィクトリア・アブリル
- ペネロペ・クルス
- ファニー・アルダン
- デミアン・ビチル
- ガエル・ガルシア・ベルナル
- フアン・エチャノヴェ
- エミリオ・グティエレス・カバ
人々が地獄ばかりに行くため先行きの見通しがすっかり悪くなってしまった天国の司令官マリーナは一人のボクサーの魂を救うため天国で人気か主としてステージに立っているロラを工作員として地上に派遣することにした。一方の地獄の司令官ジャックは地獄のレベル22でウェイトレスをしているカルメンを工作員として派遣、果たしてどちらがボクサー・マニの魂を手に入れるのか…
ペネロペ・クルスがスペインに戻り、スペインの人気女優ビクトリア・アブリルと共演したコメディともサスペンスともヒューマンドラマともとれるようなドラマ。監督は『死んでしまったら私のことなんて誰も話さない』のアウグスティン・ディアス・ヤネス。『アモーレス・ペロス』のガエル・ガルシア・ベルナルも出演。
ペネロペ・クルスが… ということで話題になると思われるけれど、多分これは今スペイン映画で面白いものを作ろうとしたらこんなものという感じです。アウグスティン・ディアス・ヤネスは『死んでしまったら私のことなんて誰も話さない』でもビクトリア・アブリルを使い、この映画でも実質的な主役はビクトリア・アブリル。それにペネロペを加えてマーケティング的な効果を狙う。ヨーロッパ発で世界に売り出すにはこの手という感じです。
映画としての面白さは、天国と地獄というわかりやすい対立構造を持ちながら、それをそのまま対立項としていないところでしょう。それぞれに複雑さがあり、それぞれに事情がある。天国=善、地獄=悪では決してない。よく考えると、そりゃそうだという気がするわけですが、普通は単純なものとして描いてしまう。そこがなかなかうまいところ。そして、観客をそのような天国や地獄の事情をわかった共犯者として現世に連れて行く、そのあたりの操作法もなかなか。コメディでもなく、サスペンスでもなく、ファンタジーだけどどこかリアル。この監督は前作でもそうでしたが、リアルなものを作り出すのがうまい。エンターテインメントとしては優れているとはいいかねますが、ドラマとしては生々しさがあっていいんじゃないかと思います。
ということで、映画としてはハリウッド映画と特に変わるところもないわけですが、作りはやはりアメリカとはちょっと違います。ハリウッドの底抜けの明るさがなく、どことない暗さがある。ペネロペもスペイン時代に戻ったようでその暗さにすっとなじんでいる。ボーっと見ていると、出来損ないのハリウッド映画かと思って、あまり面白くない感じがしているかもしれません。
しかし、これがヨーロッパ映画であること(つまりハリウッド映画ではないということ)を意識してみると、いろいろ面白いところが見てきます。先ず、地獄の公用語が英語。そしてペネロペが働かされているダイナーはアメリカ風で、来ている人たちも多分アメリカ人。つまり、基本的に地獄はアメリカ的なもの。それに対立するものとして天国がヨーロッパ的なもの(その象徴としてのフランス)としてあるということ。
このことはあまりストーリーに関係してくるわけではないですが、これに注意してみているといいかもしれません。最後にエピローグのところで「反グローバリゼーション」という言葉が出てくる(それはつまりハリウッドのグローバリゼーションに反対するということでもある)ところで、ふふふとほくそえむことができます。