ピンポン
2003/2/3
2002年,日本,114分
- 監督
- 曽利文彦
- 原作
- 松本大洋
- 脚本
- 宮藤官九郎
- 撮影
- 佐光朗
- 音楽
- 二見裕志
- 出演
- 窪塚洋介
- ARATA
- サム・リー
- 中村獅童
- 夏木マリ
- 竹中直人
- 松尾スズキ
- 大倉孝二
- 荒川良々
小学生のころいじめられていたスマイルを卓球に誘ったことからペコとスマイルの卓球人生が始まった。高校生になり、同じ片瀬高校の卓球部に籍を置くが、ペコは練習をサボってなじみのタムラでかけ卓球をしていた。高校の顧問の小泉や他の学校の一流選手たちはスマイルの才能に気づいていたがクールな本人は「卓球は暇つぶし」といって、小泉の指導もうけようとはしなかった。そうこうしているうちにインターハイの予選が始まる…
松本大洋の原作を宮藤官九郎の脚本で映画化。窪塚洋介と宮藤官九郎のコンビは「GO」に続いて二度目となる。シリアスさと笑いが共存するという原作の雰囲気をうまく再現した感じ。
松本大洋の漫画には独特な世界があり、それを映像に表現するのは難しい。だから、それを忠実に映像化しようとするのではなく、映画という新たな作品として提示することが重要であるということはいうまでもない。
松本大洋の優れた点はその世界観だけにあるのではなく、その物語の組み立て方にもある。だから、原作をある種の原シナリオとして使うという方法がいい。そう考えると、この映画は少々原作に引きずられすぎたのかもしれない。もっと自由に空を飛べれば、原作のよさを残しながら映画としてのすばらしいものができたのかもしれない。
とはいえ、この映画は面白い。映画表現として優れているかどうかはともかく、物語としても面白いし、キャラクターの作り方も面白いし、笑いの作り方も面白い。キャスティングもいい。
主演の窪塚洋介がこれだけコミカルな役を演じられるというのも驚きだし、スマイルのARATAもいかにもというキャラクターでいい。サム・リーもそのまま、夏木マリもそのまま。出色はドラゴンの中村獅童で、シリアスで怖いキャラクターでありながら、おかしさ・かわいさをも表現するという難しいことをうまくこなす。さすが中村嘉葎雄や萬屋錦之介を伯父にもつ歌舞伎役者である。私としては竹中直人だけがちょっと役柄からずれた感じがしましたが…
やはりそれらのキャラを作り上げたのは松本大洋、そしてそれを生かしているのは宮藤官九郎、宮藤官九郎の力量はおそらくさらなる脇役アクマやキャプテン大田のあたりに発揮されているのでしょう。そのあたりの笑いのセンスもなかなかのもの。
ところで、この映画はCGバリバリなわけですが、この作品の監督がVFX畑の人らしく、あの『タイタニック』のVFXにも参加していたらしい。そういう人が監督だからこういう映画になったのか、それともこういう映画を作ろうと思って監督を決めたのかはわかりませんが、とにかくCGがこれでもかこれでもかと使われている。卓球シーンはそれでかなり臨場感が増しているのかとは思いますが、基本的にはやりすぎの感もある。たとえば冒頭の端から飛び降りた窪塚を静止させたままカメラをぐるぐる回したりするシーンなんかは、ただただVFXを見せるだけにあるようなシーンで、これはどうなの? と思ってしまいます。
まあ、でも卓球の球はほとんどがCGということでそれであれだけのスピード感が表現できなたのだと思うと、さすがという感じがしますね。結果的に、監督と脚本とカメラと出演者の分業体制がうまく回ったという気はします。