世界で一番醜い女
2003/2/5
La Mujer mas Fea del Mundo
1999年,スペイン,109分
- 監督
- ミゲル・バルデム
- 脚本
- ナッチョ・ファエルナ
- 撮影
- アラン・バネ
- 音楽
- フアン・バルデム
- 出演
- エリア・ガレラ
- ロベルト・アルヴァレス
- ハヴィヴィ
- ヘクター・アルテリオ
- アルベルト・サン・フアン
1982年、スペインで世にも醜い女の子ローラが生まれた。それは看護婦さえも失神してしまうほどの醜さだった。しかし、2010年の大晦日、美女に姿を変えたローラが尼僧の格好をして老人ホームに暮らす老婆を刺し殺す事件が起こった。ローラが美女になったいきさつは? そして、そのことと殺人事件との間にどんな関係があるのか…
なかなか不思議な作品だが、ジャンル分けするとしたら、近未来SFサスペンスコメディとでもいうところ。監督も出演者もあまり名も知られていない感じ。
「世界で一番醜い女」などというものを映像で表現するのは難しいというか、事実上不可能だといっていい。だから、この映画がその顔を映さず、ずっと謎にしておくのは正解だろう。それでも観客のその顔を見たいという欲求は高まり…という感じでうまく観客を引き込めるはず。
サスペンスとしての推理の部分はなんともお粗末で、こじ付けというか無理やりの部分もかなり多いのが気になるところ。それもこれもサスペンスなのかSFなのかコメディなのか、どれもこれも中途半端になってしまったことが原因という気がする。SFとしても2010年という設定だから仕方がないのかもしれないけれど、それほどSFっぽくはなく、ただいまからちょっと進んでいるだけという感じ。音声でチャンネルが変わったりするテレビやビデオなんかは確かに10年くらいの間に出来そうなものだけれど、それを描くためにわざわざ舞台を2010年に設定したのかと思うと理解に苦しむ。これなら別に近未来じゃなくて現在でも出来たんじゃないかと思う。
それも含めて全体的に稚拙という感じ。B級というのではなくて、それなりのものを作ろうとしていながら、どうしてもA級にはなれないという稚拙さがこの映画にはあります。
とくに、人間の描写に深みがなく、あまりに幼稚。人間こんなに単純じゃねーよという人物ばかりが映画に登場する。暗い過去を抱えているはずのローラも、深い人間洞察しているはずの警部も、なんとも幼稚。右腕の刑事だけが人間的に幼稚であることを自覚して、成長しようとしているような気もするけれど、結局のところどんぐりの背比べというか、幼稚な中で成長しているだけという感じ。
スペインの映画が日本でなかなか受け入れられにくいのは、暗さや笑いの質の受け入れがたさもありますが、この映画に典型的に見られるようなマッチョで幼稚な価値観のせいでもあるのかもしれません。