サンキュー、ボーイズ
2003/2/9
Riding in Cars with Boys
2001年,アメリカ,131分
- 監督
- ペニー・マーシャル
- 原作
- ビヴァリー・ドノフリオ
- 脚本
- モーガン・ウォード
- 撮影
- ミロスラフ・オンドリチェク
- 音楽
- ハンス・ジマー
- ヘイター・ペレイラ
- 出演
- ドリュー・バリモア
- スティーヴ・ザーン
- アダム・ガルシア
- ブリタニー・マーフィ
- ジェームズ・ウッズ
- ロレイン・ブラッコ
コネティカット州の小さな町、文才豊かな高校生ビバリーはニューヨークの大学に行って作家になることを夢見ていた。しかし人並みに恋もしたい彼女は出かけたパーティーで思いを寄せるスカイに詩を贈るがそれを暴露されみんなに笑われる。しかし、そのスカイに仕返しをしてくれたレイと恋に落ちた。そして、15歳にして妊娠、結婚、ビバリーの人生プランは完全に崩れてしまった…
実際に自分自身の経験を書いて作家となったビヴァリー・ドノフリオの原作の映画化。監督も『レナードの朝』などで知られる女性監督ペニー・マーシャル。
ドリュー・バリモアってなんだか結構すごいんじゃないかという印象。さすがに15歳を演じるのは無理がありますが、それでも演技に表情があり、ドリュー・バリモアで持つ映画という感じになっている。本当にたくさんの作品に出ていますが、これまでは演技がうまいという印象は特になかった。しかし、この映画ではかなりいい演技を見せる。喜怒哀楽の表現の仕方、20代の表現と30代の表現の違い、などなかなか見せる演技をしているのです。芸暦も長く、すっかりベテランというイメージで、30代の演技のほうが板についている感じがするけれど、実はまだ28歳。7歳で『ET』に出演し、9歳ころから酒とドラッグにおぼれ、14歳で自殺未遂という、この映画のビバリーよりもものすごい人生を送ってきた彼女だけに、この程度の人を演じるのは朝飯前という感じだったのか…
というドリュー・バリモアに尽きる映画だったわけですが、物語としては私は好きです。あまり登場人物の深くに突っ込まず、表面的な争いやつながりなどを淡々と描いていく。それはなんだか薄っぺらなような木もするけれど、登場人物の気持ちをわかりやすく翻訳して描いてしまうよりも本当は深いもの。見ている人がその言動の奥にある心理を読み取ることで物語りにどんどん深みが生まれてくる。ドリュー・バリモアの演技はそれを可能にするに十分なものだし、夫のスティーヴ・ザーンも無表情でいることによって、考えていることのわからなさというものをうまく表現しているような気がする。
どのような関係に中でも生じる、諍いや和解。家族ともなれば、その諍いや和解は無数に積み重なって、感情も日々変化していく。それをひとつのプロットに、ひとつハッピーエンドの物語にすることなど不可能なはずだから、それはそのまま描くのがいい。もちろんそうすることで、ストーリーは平板になり、エンターテインメント性やスペクタクル性は奪われるかもしれない。しかし、ひとつの実話としてはそのような複雑なものを複雑なまま描いたほうが自然だ。
でも、まあ、物語自体をよく考えると自分を正当化し過ぎかもね。子供を語り手とすることで、自分に対する批判を紛れ込ませているわけだけれど、それはあくまで言葉上の批判であって、実際のところは自分がやったことを正当化している。自分のやり方でよかったと信じている。しかし、本当はそれほど単純じゃないような気もする。親も夫も子供もあくまで自分という座標から見ているだけ。このひとは、本当に心からみんなに助けられたおかげでやってきたとは思っていないと思う…
ということにはなりますが、まあ、いい映画だったのではないでしょうか。