裏窓
2003/2/12
Rear Window
1954年,アメリカ,113分
- 監督
- アルフレッド・ヒッチコック
- 原作
- コーネル・ウールリッチ
- 脚本
- ジョン・マイケル・ヘイズ
- 撮影
- ロバート・バークス
- 音楽
- フランツ・ワックスマン
- 出演
- ジェームズ・スチュワート
- グレイス・ケリー
- レイモンド・バー
- セルマ・リッター
- ウェンデル・コーリイ
取材中に足を骨折し、ギプスをはめて家で療養中のカメラマンのジェフは日がな一日裏窓から近所の人々を眺める生活。下着姿で踊る若い女性をミス・トルソなどと名づけながら、恋人のリザとの結婚に頭を悩ませたりしていた。そんなある日、病床にある妻とセールスマンの夫との激しい口論を目撃、その日の夜中、雨が降りしきる中男が何度も出かけるのを不審に思ったジェフは殺人事件ではないかと考える…
動けない主人公に視線を固定し、観客をもその部屋の中に閉じ込めることによって不自由さを生み、そこからサスペンスを作り出すヒッチコックの腕はさすが。
ヒッチコックというとサスペンス、これももちろんサスペンス。サスペンスとして先がどうなっていくのかが気になってしょうがないけれど、ヒッチコックのすばらしいところは、その観客のあせりに合わせて物語を展開していくのではなくて、いろいろと遊びを入れて、観客をじらすところ。
テンポが遅くていらいらさせられるサスペンス映画は多く、ヒッチコックも一見それと同じように見えるけれど、サスペンスとしての筋だけに執着せずに見ることができれば、そのテンポの遅さこそがヒッチコックのヒッチコックらしさなのだということに気づく。
大体はサスペンスという主プロットに対して、恋愛というサブプロットがつけられ、この映画もその例外ではないが、この映画ではさらに、殺人事件がおきたらしい部屋以外の部屋の人々というたくさんのサブプロットが存在する。ミス・トルソ、ミス・ロンリー、作曲家etc という隣人の生活を垣間見ることが出来、それをセリフを使わずに表現する。
このセリフを使わないというのがヒッチコックの真骨頂という感じ。隣人たちの生活のほかにも、映画の最初のほうにはジェフの境遇をセリフも何もない1カットで説明しているところもある。
そして、もちろんグレイス・ケリーですね。ヒッチコックの映画には必ずといっていいほど美女が出てきますが、この映画ではグレイス・ケリー。ただ、世間で絶世の美女といわれているように美人だとは思いませんでした。確かに美しいけれど、その美しさはただ顔が美人ということではなくて、全体的な立ち居振る舞いというか、雰囲気にあるんじゃないかと思います。わずか7年間で11本の作品という伝説的な部分もその「美女像」を増長させているのだと思います。それにしても、演技は艶やかで非常にうまく、一途にジェフのことを想うけなげさと、行動の大胆さと、世間知らずなお嬢様振りと、さまざまな面をもつキャラクターを見事に演じているといます。「こんな女優さんならどの監督でも使いたくなるだろうなぁ…」と思わせる。
主プロットのサスペンスの話には行きませんが、サスペンスって言うのはやっぱり 内容を知らないほうが面白いわけで、なのでココでは何も言いません。サスペンスの質としてはヒッチコックの中にはほかにもっと面白いものがあるというのもありますが…
最初に見るときは、そのサスペンスを楽しむわけですが、そのサスペンスの筋を知ってしまっても、いろいろと楽しめるところがあるのがヒッチコックなわけで、それがグレイス・ケリーであり、他の住人であるわけです。その点でこの作品はそんなにずば抜けて面白いわけではないけれど、繰り返し見る面白さがあるということは言えると思います。
ヒッチコックがどこに登場するのかということも、お決まりですが、楽しみの一つですね。