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ベストセラー

バルカン超特急

2003/2/18
The Lady Vanishes
1938年,アメリカ,98分

監督
アルフレッド・ヒッチコック
原作
エセル・リナ・ホワイト
脚本
シドニー・ギリアット
撮影
ジャック・コックス
音楽
ルイス・レヴィ
出演
マーガレット・ロックウッド
マイケル・レッドグレーヴ
ポール・ルーカス
グーギー・ウィザース
preview
 結婚前の最後の旅行に友達とヨーロッパのとある国にやってきたイギリス人のヘンダーソン嬢、最後の夜に隣室の上品な女性と知り合うが、夜中まで音楽を奏でる上の階の男に腹を立ててひと悶着おこす。翌朝、駅でその隣室の女性に上に植木鉢が落ちてくるのを助けようとして自分が植木鉢を頭にぶつけてしまう。ふらふらしながら汽車に乗り、友達に別れを告げる。そして介抱してくれた隣室の女性と食堂車に行くと、女性はフロイと名乗ったが…
 ヒッチコック、イギリス時代の代表作の一つ。戦争中という時代背景を生かし、緊迫感のあるサスペンスに仕上げた。マイク水野の『シベリア超特急』のもとネタとしても有名。
review
 まさにヒッチコックらしいという作品は何かと考えると、『サイコ』や『北北西に進路を取れ』のようなアメリカでの作品よりもイギリス時代の作品のほうがらしさを感じる。その中でもこの『バルカン超特急』はいかにもヒッチコックという「らしさ」を感じる。
 その「らしさ」とは何かを考えると、先ずは空間が限定されていて、美男と美女が出てきて、テンポよく話が進んで、しかし派手さはなく、チャンチャンと終わるという感じ。
 この映画はそのような王道映画なわけですが、あまりに王道なので、見慣れている感じもあり、新鮮さにかけるという感は否めない。映画だけでなく「ヒッチコック劇場」なんかも含めると、似たような話を何度も見ているような気がする。
 しかし、それでもこの映画が面白いと思えるのが、さすがヒッチコックなわけだけれど、それでは何が面白いのか? 初めて見るならばそれは謎解きの面白さ。食堂車でお茶や砂糖を細かに描写している辺りを見ながら、きっところが事件に関係あるとあたりをつける。そして主人公の心理に観客を引き込んで、もしかしたら本当に幻だったのかもしれないと思わせて、推理を混乱させる。そのあたりの心理的な展開がさすがにうまい。ヒッチコックといえば心理劇、その点でも王道を行くのがこの映画ということになる。

 何度目かにこの映画を見る場合、その面白さはどこにあるのか。先ずは目に付くのは政治的なほのめかし。このサスペンスの舞台はヨーロッパのどこかの国ということになっているが、イギリスに汽車でいけるとこからして、全く現実ではないということを主張していることは明らか。しかし、男爵夫人の口から「敵国人」という言葉が出ることからして、イギリスの敵対国ドイツをモデルにしていることは明らか。そして汽車の同じコンパートメントに座る乗客がイタリア人というのもわかりやすく示唆的ということになる。
 それから、映画としての技術。走る列車で展開される物語だけに、列車の描写がなんといっても重要。この時代の映画用のカメラは大きく重たく、列車に乗せて普通に撮影することなどとても不可能。なので、列車の中のシーンはセットで撮って、車窓から見える風景は汽車でカメラを載せた貨車を引っ張って撮影するということになる。おそらく撮影したフィルムをセットの裏からスクリーンに映してそれを撮影しているのだろう。そのようにして撮影したシーンであるにもかかわらず、まさに列車が走っているかのような疾走感があるのが驚き。もちろん、現実に走っている汽車で撮影されているようには見えないが、今見ても十分なスリルと迫力がある。
 それこそ『シベリア超特急』の疾走感のなさとは好対照で面白い。『シベ超』に限らずさまざまな映画に引用される映画であるだけに、それだけで見る価値もあると思います。
Database参照
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監督順: 
国別・年順: アメリカ50年代以前

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