Dr.Tと女たち
2003/3/2
Dr.T & the Women
2000年,アメリカ,122分
- 監督
- ロバート・アルトマン
- 脚本
- アン・ラップ
- 撮影
- ジャン・キーサー
- 音楽
- ライル・ラヴェット
- 出演
- リチャード・ギア
- ヘレン・ハント
- ファラ・フォーセット
- ローラ・ダーン
- タラ・リード
- ケイト・ハドソン
- リヴ・タイラー
ハンサムな婦人科医の“Dr.T”ことサリバン・トラヴィスのところには毎日患者が押しかけて忙しい毎日。娘のディディは結婚を控え、母親と妹と叔母とともに買い物に出かけるが、そこで母のケイトが奇怪な行動をとり始める。その日、射撃に出かけていたDr.Tは雨に降られて急いでカントリークラブに。そこで、新しくレッスンプロとしてやってきたブリーと出会う。そこに、ケイトのことで警察から電話がかかってきた…
群像劇がおはこのアルトマンがが撮ったr.T対たくさんの女性という半分群像劇という感じの映画。前半はアルトマンらしく断片の集合のような展開で、後半に一気に物語が動いていく。基本的には群像劇で、いろいろな女がいるよということ。かも。
何が正常で何が異常なのか、ということの価値基準は人それぞれ。人と少し違うと、いろいろな理由をつけてそれを説明しようとするけれど、理由をつけて安心するのは理由をつけた人だけで、人と違うといわれた人自身やその人と近しい人には「阻害」という害を与える以外には何の役にも立たないのかもしれない。
「女性は皆それぞれ違う」とのたまうDr.Tが主人公ということになっているが、この人は非常に中立で、人の価値を決めたり、行動に理由付けをしたりしない。だからこの人が映画を引っ張っていくということはなく、「女たち」のほうに引っ張られる感じで映画の中を右往左往するだけ。
しかし、Dr.Tは映画のテーマとなるような重要なことを言ったりもする。そのひとつが「女性は皆それぞれ違う」ということ。つまりそれは、「正常」という概念に疑問を呈することだ。自分の妻が「精神病」といわれても、そのケイトがケイトであることは変わらないと信じることで、それに対処していく。すべての女性に対してそのような態度で接し、ふらふらとしているようでしっかりとした軸はある。
しかし、この映画の中で彼の信念(というほどのものではないけれど)は揺らいでいく。そのようなことが描かれていると理解できたのがもう映画も終盤を迎えたころだったので、全体としてはぼやんとした印象になってしまったけれど、なんだか不思議な味わいでいい映画だった。
アルトマンの映画は何かが他の映画と違う。同じような事を描いたり、同じような俳優を使ったり、しているのに何か雰囲気が違う。私はリチャード・ギアとハリソン・フォードとケヴィン・コスナーとメル・ギブソンがよくごっちゃになって、よく考えないと誰が何の映画に出ていたかわからなくなってしまうのですが、この映画も最初、『ハート・オブ・ウーマン』と同じコンビだなと思ってみていました。が、実は『ハート…』のほうはメル・ギブソンだった… ヘレン・ハントは同じでしたが。
わけのわからないことを書いていますが、何が言いたいかといえば、『ハート・オブ・ウーマン』もそれなりに面白く、この映画もそれなりに面白いのだけれど、『ハート…』のほうは普通のコメディという印象であるのに対して、この映画はあくまでアルトマンの映画という印象。アルトマンの世界がそこにはある。自分の世界をもてる監督というのは、たとえばゴッホの絵が初めて見た絵でもゴッホだとわかるように、刻印のように名前が押されている。それはかなりすごいことだと思うのです。だから、アルトマンはすごいと思うのです。結構散漫としているので、退屈だとか思う人も多いとは思いますが、私はこのスタイルは結構好きです。
このレビューもアルトマンにつられてか散漫になってしまいました。
ところでですが、この映画ではファラ・フォーセットがなかなかよかったですね。年齢がいくつなのかはわかりませんが、ヌードなども披露したりして、さすが元チャーリーズ・エンジェル。あまり、出演作に恵まれていないような印象もありますが、これで復活?