クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
2003/3/4
2002年,日本,95分
- 監督
- 原惠一
- 原作
- 臼井儀人
- 脚本
- 原惠一
- 撮影
- 梅田俊之
- 音楽
- 荒川敏行
- 浜口史郎
- 出演
- 矢島晶子
- ならはしみき
- 藤原啓治
- 真柴摩利
- 屋良有作
- 小林愛
ある夜、野原家の4人+シロは池のほとりでさみしげな顔をしたお姫様風の美女の夢を見る。同じ夢を見たことを不思議がっていたその日、しんのすけがシロの掘った穴から文箱を見つけた。そこに入っていたのはしんのすけ自身が書いた手紙。自分は書いていないのにと不思議がっていたしんのすけはいつの間にか戦国時代の合戦場にタイムスリップしていた…
子供向けのアニメのはずが、劇場版は大人の間でも評価が高まるクレヨンしんちゃんの劇場版第10作。今回は本格時代劇で、話に無理はあるものの見ごたえ十分、笑いも感動もてんこ盛り。
宮崎駿のおかげでアニメということで馬鹿にする人は減ってきたけれど、クレヨンしんちゃんというと馬鹿にする人は多い。やはりTVアニメの劇場版というとTV版に毛の生えた長尺のスペシャルバージョンみたいなイメージが付きまとう。クレヨンしんちゃんも最初のほうはアニメのサブキャラであるアクション仮面なんかをフィーチャーしたスペシャルみたいなことをやっていたけれど、いつのころからか、1本の本格長編アニメを作るようになっていたらしい。私はクレヨンしんちゃんの劇場版はこれまで最初のほうの2・3本しか見たことがなかったので、この作品の出来には本当に驚かされました。
はっきり言って『千と千尋の神隠し』より面白い。最近の(日本の)アニメでは『メトロポリス』に匹敵し、もしかしたら上回ってしまうかもしれないくらいの面白さ。歴代アニメベスト10に入るなこりゃ。
何が、そんなに面白いのかといえば、なんといってもプロットがしっかりしている。野原家の介入の仕方にはなかなか無理があるとは思うけれど、それはそれ。しんのすけが飛び込んだ戦国時代の物語が実にしっかりとしているわけです。そしてその戦国時代の物語を支える時代の哲学というか生き方というものが(リアルなものではありませんが)現代と対比される形で描かれている。その哲学とか生き方は戦国時代固有のものというわけではなくて、日本の古きよき伝統という幻想なわけですが、やはりそれは日本人の琴線に触れるものであるわけです。そのへんをよく踏まえて、物語は現代的に描くというところがうまいところ。かなりほんわかと感動がやってきます。時代が買った恋愛を取り込んだのもかなり感動ポイントは高いでしょう。
そして、画の組み方が非常に映画出来であるということもいえます。宮崎駿をはじめとした長編アニメーションの面白いものというのは、画面の構成が漫画漫画しておらず、むしろ映画に近い。擬似的にカメラの動きをつけたり、ピントを送ってみたり、切りかえしてみたりする。この映画もそのようなカット割が使われていて、とくに人物と人物の間に風景が挟まれたりするカットの構成の仕方が非常にうまい。
そして、今回はタイムスリップものなわけですが、そのタイムスリップも意外に筋が通っていて破綻がない。見終わって振り返ってみると、非常に筋が通った話になっているのです。そのタイムスリップの部分のドラマを支えるのはひろし、いつもはあまり活躍せず、今回も特に目立った活躍がるわけではないですが、他の人たちがタイムスリップということにあまり頓着しない中、一人で悩んだりしながら結局うまく運んでしまう、そんな役回りを演じています。タイムトラベルにこだわる私としては、そこもポイントが高い部分。