ブラックジャック
2003/3/24
1996年,日本,93分
- 監督
- 出崎統
- 原作
- 手塚治虫
- 脚本
- 出崎統
- 森都絵
- 森絵都
- 撮影
- 高橋宏固
- 音楽
- 鈴木清司
- 川村栄二
- 出演
- 大塚明夫
- 水谷優子
- 涼風真世
- 星野充昭
- 井上喜久子
あるオリンピックで人間の限界を超えるような記録が次々と出た。その頃、世界最高の腕を持つ無免許医ブラック・ジャックは一人の少女の手術を執刀した。2年後、超人類と呼ばれる人々はどんどん増える、そんな中ブラック・ジャックは執刀した少女の病気が再発したという報告を受ける。そんなことはありえないといぶかしむブラック・ジャックだったが、志望した少女を解剖してみると、その臓器はまるで90代の老婆のように老化していた…
手塚治虫の名作「ブラック・ジャック」だが、映画化はこれが始めて。テレビではアニメのほか、加山雄三主演の実写版も作られている。漫画のほうに親しみがある人は少々絵に違和感を感じると思うが、あまり奇をてらわない作画なのですぐなじむことが出来る。
映画の全体がなんだかあまり「ブラック・ジャック」っぽくない気がします。中盤はなかなか盛り上がりがあり、手に汗握ってみることが出来るけれど、全体的にはテレビアニメの域を出ず、原作にを追いついていない。手塚アニメで原作に追いつくというのもなかなか難しいわけではあるけれど、一応映画として公開するからにはそれくらいのことはしてほしいということです。
確かに発想は面白いし、ブラック・ジャックの手腕が発揮されている点ではいい。しかし、あまりに展開が読み安すぎるし、かなりほとんどそのとおりに進んでいく。こういう展開を楽しむ映画はもっとスリルとサスペンスがないとはらはらどきどきと見ることができないわけです。アニメなんだから、現実的なリアリズムにこだわらずに、もっとアニメ的なリアリズムに頼ってしまってもよかった気がします。
あと、「ブラック・ジャック」らしからぬところといえば、ピノ子が今ひとつ生きていない。「ブラック・ジャック」はブラック・ジャックとピノ子のふたりがいて初めて成立するわけで、そのふたりの微妙な関係が今ひとつ消化されていない気がする。ピノ子がたびたびでてきはするけれど、本筋のストーリーとは関係ない余話みたいな感じになってしまっているのが今ひとつ。
基本的には、いろいろな要素を盛り込みすぎて、それを消化し切れなかったというところでしょうか。もっと練って一体感のあるプロットにするか、焦点を絞ってストレートな話にするかしたほうが面白くなったのではないかという気がします。
物語としては非常に現代的で、ありえないことではないという気がする話。営利ばかりに目が言って、人間を見失ってしまう企業とその独裁者的なオーナーという構図はいくらでも描けるくらい現代的なモチーフであり、危機感を募らせる話でもあります。今で言えばクローン技術とかいろいろな科学技術が、企業のさじ加減ひとつで世界的な危機を生むかも知れない状況にあると思います。そんなことを考えてみるにはいいかもしれませんね。