ゴダールの探偵
2003/3/25
Detective
1985年,フランス,105分
- 監督
- ジャン=リュック・ゴダール
- 脚本
- ジャン=リュック・ゴダール
- アラン・サンド
- フィリップ・セトボン
- 撮影
- ブルーノ・ニュイッテン
- 音楽
- ピエール・ガメ
- 出演
- ジョニー・アリディ
- ナタリー・バイ
- クロード・ブラッスール
- ローラン・テルジェフ
- ジャン=ピエール・レオ
- ジュリー・デルピー
2年前「王子」が殺された部屋で張込みを続ける探偵、甥とその恋人もその部屋で張込みをする。一方、パイロットの夫ジュヌヴィエーヴはボクシングのプロモーターのフォックスから貸した金を返してもらい夫と別れようと考えていた。そのフォックスが抱えるボクサーのタイガーは練習のせずすごしている。そして家族を連れた謎のマフィアのボスも登場。
全体的な物語の筋がまったくわかりにくく、いったい何の物語だかわからない。脱物語はゴダールのおはこだが、ココまで極端なものは珍しい。しかし、映像と音にはいつもながらの冴えを見せ、さすがとうなるところもある。
ゴダールとは理解するものではなくて感じるものだとは思うけれど、一応ひとつの映画としての統一感がないと入り込むのは難しい。まったくつながりのない複数のプロットがカットの切り替えによって結ばれるこの映画は、そのような意味で非常に入り込みにくい映画だ。そして理解しようという作業すら放棄して、日々の疲れを思ってふっと寝入ってしまう。そのような人が多いかもしれない。
映画の音と比してかなり大きい音楽が全体をひとつのパターンに統一している気はするけれど、それだけで映画を理解することは出来ない。圧倒的な映像と音のシャワーというわけでもなく、一つ一つは物語として成立してそうな物語が組み合わさることで理解できない融合体になってしまうという不可思議さ。80年代に映画をかなり量産したゴダールの映画のすべてを理解することはとても出来ないということを端的に表してくれる作品なのかもしれない。
ココまでわからなくても、つまらないとか、どうしようもないと思わないのはゴダールという名前のせいなのか、それとも映画に何かあるのか。少なくとも、トーンを抑えた薄暗い映像は日常的でありながら感性を刺激してくれるものであるし、映像と音の不釣合いな組み合わせというのもゴダール的な何かを考えるのに役立つ。
寝てしまうのは退屈だからではなく、すべてを理解しようとするとあまりに情報が多すぎるからなのかもしれない。飽和状態になった頭がこれ以上の情報処理を拒否してしまう感じ。
なんて思っては見たけれど、結局のところ理解できないのが悔しくて、並べてみた言い訳に過ぎないのかもしれない。