レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う
2003/3/28
Leningrad Cowboys Meets Moses
1994年,フィンランド,95分
- 監督
- アキ・カウリスマキ
- 原案
- サッケ・ヤロベンバー
- 脚本
- アキ・カウリスマキ
- 撮影
- ティモ・サルミネン
- 音楽
- マウリ・スメン
- 出演
- マッティ・ペロンパー
- アンドレ・ウィルム
- レニングラード・カウボーイズ
メキシコでヒットを放ったレニングラード・カウボーイズだったが、その人気は1年しか続かず、メンバーはテキーラの魔の手にかかってしまった。地べたに座ってただただテキーラを飲むそんなメンバーのところにニューヨークで公演があるという電報が届く。そしてニューヨークへ向うメンバーの前に現れたのは行方不明になったはずのウラディミール。しかし、彼はウラディミールではなく、モーゼだと名乗った…
カウリスマキのナンセンス・コメディ『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』の続編。そのパワーは落ちることなく、ただただよくわからないまま引きずられていく。
この映画は多分、「出エジプト記」をモチーフにしています。ハルカなる故郷へのたびといえば「出エジプト記」ということで無理やりモーゼを登場させて、作ったということでしょう。「出エジプト記」の内容はよく覚えていませんが、多分、ほぼ忠実に内容を映画化しているのだと思います。しかし、途中で出てくる宗教的な訓話からして、どう見ても敬虔な気持ちで作ったというわけではなく、むしろパロディ化するという意志が強かったのではないでしょうか。『出エジプト記』をパロディ化するというのはかなり大胆なことですが、カウリスマキならやってしまいそうだという感じです。
それにしても、このナンセンスさ。いきなりカウボーイ・ハットからリーゼントが飛び出しているというのだけで笑ってしまいましたが、全体的に笑えない笑いが満載。不条理もココまで来るとすごい。私は「メキシコ部」がどうにも好きで、「テキーラの歌」なんてサイコー! と思いましたが、どうなんでしょう。
なんだかんだで楽しいわけですが、いったい何なんだという疑問も残る。ただのコメディなのか、それとも「出エジプト記」から何かを示唆しようとしているのか、よくわからない。おそらくカウリスマキとしては何かを言おうとしているのだろうけれど、ナンなんだろう?
部分部分は面白いんだけれど、全体的に見ると、単調で、退屈であるという見方も出来る。結局何も起こらないまま映画は進み、起こったことの説明もされず、なぜ登場人物たちがそのような行動をとるのかもよくわからない。だから、最後まで不思議な印象ばかりが残って、映画全体としてどんな映画だったのかということがよくわからない。そんな映画になっていると思います。しかし、もちろんそれもカウリスマキの狙い。わけのわからなさというものを構築することに何かをこめている。そんな気がします。
好き嫌いはかなり分かれるでしょう。カウリスマキはなんだかいわゆる西洋的なものの考え方とは違う考え方をしているような気がするので、ハリウッドを代表とする映画になじんでいると、どうもわけがわからんと言うことになりそうです。アート系を期待してもちょっと違うむしろB級な味わい。ある種のカルト映画とジャンルわけされそうな作品ですが、完成度はかなり高いんじゃないかと思います。