女性上位時代
2003/3/29
La Matriarca
1968年,イタリア,94分
- 監督
- パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
- 脚本
- パオロ・フェラーリ
- オッタヴィオ・ジェンマ
- 撮影
- アルフィオ・コンチーニ
- 音楽
- アルマンド・トロヴァヨーリ
- 出演
- カトリーヌ・スパーク
- ジャン=ルイ・トランティニャン
- ガブリエル・フェルゼッティ
夫を亡くした若妻のミミだったが、ちっとも悲しみが湧いてこず、むしろひとりになれたことを喜んでいた。そんな彼女に夫の遺産を管理する弁護士が夫が生前アパートを借りていたという事実を告げる。そのアパートを訪れてみたミミは夫がそこで彼女の親友であるクラウディアと乱痴気騒ぎをしているフィルムを見つけた…
60年代イタリアでセックス・シンボルとして活躍したフランスの女優カトリーヌ・スパークの代表作のひとつ。ブリジッド・バルドー並みのコケティッシュな魅力で男を狂わす小悪魔の物語。
ビデオのパッケージにもポスターにもなっている、馬乗りの写真を見て思い出すのはやはり、増村保造の『痴人の愛』。作られたのはこの映画の前年の1967年、話の筋はまったく違いますが、ひとつのイメージとしての形は一致しています。まあ、渥美マリと小沢昭一の濃さと比べると、こちらはさっぱり、ライトなコメディタッチという感じではありますが。
映画としてはたいした映画ではなく、カトリーヌ・スパークの映画ということになりますが、その魅力もさることながら、ファッションも注目に値するでしょう。
60年代という時代、アメリカではブリジッド・バルドー、フランスではジェーン・バーキンなどなどいわゆるロリータ系の女優さんが活躍した時代でした。コケティッシュな魅力というのがもてはやされ、ファッションもかわいいけれどセクシーというか、そんなファッションがよく見られるような気がします。この映画はそんな時代を映像でポンと示すひとつの時代の教科書のような映画。映画史的には60年代というのは大変な時代ですが、映画から視野を広げて広く時代性を見てみると、この映画のようなポップな時代だったという気がします。今見ると、そんな時代へのノスタルジーからか、なおさらそのようなものが感じられ、非常にかっこいい映画だと感じられます。だからこそリバイバルもされたのだろうけれど、そうとしかいいようがないのです。
全体的にはそういうことですが、こういう映画は細かいところが引っかかってこないとなかなかヒットしてこないもの。私としては、「裸になる」と言いながらまずつけまつげをはがすカトリーヌ・スパークに何か哲学的なものを感じました。あとは、大学生を装うときの眼鏡ファッションがあまりにいかにもという感じもしないことはないけれど、急にイメージが変わっていい感じ。裸にテンガロンハットなんてのはちょっと狙いすぎの感があって今ひとつでしたが。
映画の筋もちょっと浅すぎると言うか、単純すぎると言うか、何ですね。医者とのエピソードのあたりになるとなかなか楽しめますが、それまでは筋なんてあってないようなもの。そのあたりの場当たり的な感じも時代性なのかもしれませんね。
などなど、何を書こうとしても「時代」という言葉が口をついてしまうそんな映画。60年代を好きな人なら、見て損はないのではなかろうか。ちなみに私は60年代が好き。