悦楽晩餐会/または誰と寝るかという重要な問題
2003/4/5
Rossini Oder die Morderische Frage, Wer Mit Wem Schlief
1996年,ドイツ,114分
- 監督
- ヘルムート・ディートル
- 脚本
- ヘルムート・ディートル
- 撮影
- イネス・レニエ
- 音楽
- ダリオ・ファリーナ
- 出演
- ヨアヒム・クロール
- ハイナー・ラウターバッハ
- マルティナ・ゲデック
- ゲッツ・オゲルグ
レストラン・ロッシーニ、そこに集まる常連たち、映画監督のウフ、プロデューサのオスカー、オスカーとヴァレリーを争う詩人のパオロ、ウフが映画化を狙うベストセラーを書いた作家のヴィンディッチ、医者のジギー。
ウフとオスカーが作ろうとしている映画を中心に、レストランに集まる人々の人生と恋愛を描いた、大人の群像劇。映画はほとんどがレストラン・ロッシーニでの2夜の出来事に絞られ、しかし劇的に展開する。
人生とは何か、愛とは何か、いくつになっても答えることができないこの問い。別に味がいいから来ているとは思えないレストランの常連の人々。彼らはもういい年だけれど、この問いを問い続ける。われわれもこの問いを問い続けている。もちろん答えはない。この映画でも答えは示されない。しかし、その問いが存在していることは確かで、答えを探ろうとするいくつかの形がそこにある。この映画に登場する人々の誰しもがその答えを探ろうとしている。ひとつの型にはまった登場人物を登場させてドラマを展開するのではなく、それぞれ違う人生を歩んできて、人生に対して違うスタンスをとるさまざまな人たちが登場し、それぞれのドラマを展開する。それはある意味ではばらばらな物語の寄せ集め出しかないがそのばらばらなものの寄せ集め、決してひとつのドラマに収斂しないカオス的なドラマからこそ何らかの真実のかけらを拾い出せることがある。
この映画に出てくる人たちはみんな頑固で、自分のスタンスを崩さない。自分の人生に自信があるというわけではないけれど、40年かそこら生きてきて、固まってしまった生き方を変えることが出来ない。よりよい解答にすり寄って簡単に自分のスタンスを変えてしまうよりも、そのほうがなんだか説得力がある気がする。この映画の副題は「あるいは誰と寝るかという重要な問題」というものだが、映画の最後まで見て始めて、この副題の意味がわかる。「誰と寝るか」というのが「重要」である理由が。あるいはこの「重要」という言葉が皮肉であるかもしれないということが。
基本的にはシリアスなドラマだけれど、ところどころに笑いをちりばめる。90年代後半からのヨーロッパ映画で面白いものにはコメディが多い。この映画はコメディではないけれど、そんな面白いコメディたちに近い匂いがする。映像の作りもこってはいないけどしゃれている。音楽にもセンスがある。主人公が大人である。などなどの共通点がそこに浮かんでくる。
傑作とはいかなかったけれど、大人の週末にはぴたりと来る作品でした。