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鉄腕アトム 宇宙の勇者

2003/4/7
1964年,日本,90分

監督
山本暎一
高木厚
林重行
原作
手塚治虫
脚本
山本暎一
鈴木良武
林重行
撮影
佐倉紀行
清水達正
広川和行
音楽
高井達雄
出演
清水マリ
勝田久
矢島正明
水垣洋子
谷津勲
preview
 2004年、地球の人口の半分をロボットが占めるようになった時代。すべての部品が人工知能を持つロボットで出来た自分たちの意思で組み上がる宇宙船が作られた。その指令をするのはアトム。そして報道陣の前で公開実験が行われるが、運転席のレバーが言うことを聞かず、実験は失敗。しかもレバーはロボット艦隊を建造しようとするとある国によって盗まれてしまう…
 人気を博したTVアニメ『鉄腕アトム』のスペシャル版として劇場で公開された映画。時代背景とアトムについての説明も織り交ぜて、アトム初心者にわかりやすい内容になっている。内容は30分の相互に関連する独立したストーリーを3つつなげて、ひとつの話としたもの。
review
 『鉄腕アトム』の最大のテーマのひとつはロボットと人間の関係である。人間社会の中でロボットが増えて行ったらどうなるか、便利な道具として生まれたロボットが人間を上回る能力を持つようになったとき、人間はどう反応するのか、それは「ロボット」という概念が考え出された頃からSF作家たちの想像力を書きたてる問題だった。その解決のひとつとして編み出されたのがアシモフによる「ロボット工学3原則」である。
1 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
2 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第1条に反する場合は、この限りではない。
3 ロボットは前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない
 手塚治虫もこの「ロボット工学3原則」に基本的には沿って物語を作っている。しかし、この3原則はある程度ロボットの奴隷化を認めるもので、そこに人間とロボットを同等のものと考える発想はない。手塚治虫が『鉄腕アトム』で強調するのは人間とロボットに違いはないという考え方である。
 まだ出来てもいないロボットに対する差別について考えても仕方がないともいえるけれど、手塚が言いたいのはそれが翻って現代の差別の問題にも反映するということだろう。何を人間と考え、何を違うと考えるのか、アメリカにわたったヨーロッパ人が、先住民やアフリカの黒人を人間とは考えなかったように、人間という範疇から排除することで生まれる差別の可能性は、あちこちに転がっているということだ。
 この映画では宇宙人について言及される。そしてそれはある種の差別意識を含んでいる。ロボットに対する差別を批判しながら、宇宙人に対する差別は否定しない。もちろんそれはここに出てくる宇宙人が悪人だからだが、そこには宇宙人と地球人を分かち、宇宙人を人間ではないと考える差別意識がある。
 この映画は「差別」ということを考える上でとても面白いテキストになっていると思う。

 手塚アニメの魅力はそんな哲学的なことをも読み取れることにもあるけれど、やはり最大の魅力はそのわくわくするロマンとユーモアである。わくわくする魅力というのは「アトム」というだけでことさらあげつらうまでもなくわかるだろう。ユーモアという点ではこの映画はかなり面白い。ネタばれになるので内容は言えないが、映画の中盤あっと驚く仕掛けがあり、それが笑いに使われる。そしていつもの変な豚のネタも健在。ロマンに笑いに哲学に、手塚アニメはおくが深いのです。
Database参照
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国別・年順: 日本60~80年代

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