めぐり逢う大地
2003/4/10
The Claim
2000年,イギリス=フランス=カナダ,121分
- 監督
- マイケル・ウィンターボトム
- 原作
- トマス・ハーディ
- 脚本
- フランク・コトレル・ボイス
- 撮影
- アルウィン・H・カックラー
- 音楽
- マイケル・ナイマン
- 出演
- ウェス・ベントリー
- ミラ・ジョヴォヴィッチ
- ピーター・ミュラン
- サラ・ポーリー
- ナスターシャ・キンスキー
カリフォルニアの山深い土地にある小さな町キングダム・カム、その街に鉄道の測量隊が訪れ、町の所有者であるダニエル・ディロンはその測量隊の隊長であるダルグリッシュに会う。また同じ日、胸を患う母とその娘も町を訪れる。娘のホープはダルグリッシュに出会い、ほのかな恋心を抱くと同時に、母の言いつけでディロンにロザリオを渡しに行く。
トマス・ハーディの小説『カスターブリッジの市長』を映画化したコスチュームプレイ。本来の舞台はイギリスだが、開拓期のアメリカにすることでよりダイナミックなドラマになっている。
マイケル・ウィンターボトムというとなんとなくドキュメンタリー風というイメージがありますが、この映画はコスチュームプレイということでさすがにそれはないだろうということですが、映像面でやはり普通とは少し違うことをやっています。まずピントをぼかした映像が多い。ぼんやりと物を見せて徐々にピントがあっていくというやり方自体は珍しいものではありませんが、多すぎるし、やり方も露骨過ぎるというか、不必要というか、何の効果を狙っているのかわからない。観客は映画を「見に」来ているだけに、ものがはっきり見えないといらいらしてくる。いらいらさせるのも方法で、それを利用するならいいのだけれど、この映画は別にそれを狙っているわけでもない。
それから、異常なほどのアップが多い。顔のアップとかではなく、頬骨が画面いっぱいとかいうレベルのクロースアップ。これもぱっとカットが切り替わったときはなんだかよくわからず、少しずつ弾いていったり、被写体が動くことでなんだかわかるという仕掛けだけれど、その必然性が感じられない。それよりも、あまりにアップにしすぎて皺とかシミとかが見えてしまって、少女役のサラ・ポーリーが意外と若くないんじゃないかという風に見えてしまったりしました(実際は21歳でそれなりに若い)。
というように映像にはかなり疑問を感じ、ウィンターボトムの映画は『ひかりのまち』をはじめとして、たいがい映像には違和感を感じるのです。
しかし、なんとなく映画には惹かれてしまったりもする。しかも、たいした話ではないと思いながらも、物語に見入ってしまう。そのあたりがウィンターボトムのすごいところだと思います。この映画も終わってみれば「だからどうした」という映画であるような気もしながら、その奥に何かありそうなにおいを感じる。
これがもしアメリカの平凡な監督によって作られていたら、白人万歳の古きよきアメリカを懐かしむある種のノスタルジー映画になってしまい、それこそ本当に面白くもなんともない映画になってしまっただろう。この映画も男尊女卑や、人種差別があって、それが陰に隠れながらも時折主張されたりする。特に肯定するでも否定するでもなく、事実として映画の中に溶け込んでいる。そのあたりの当たり前な感じ、現代ではなく歴史を描いたものでありながら、そこに何か自然さやリアリティを感じさせるというのがこの監督のうまいところなのでしょう。 だから特別面白かったという記憶はなくとも、印象に残る映画ではある。
ところで、先ほども出てきたサラ・ポリーは湾岸戦争のとき、「子供賞ショー」なる授賞式にピースマークをつけて現れ、ディズニーの代表の静止も拒絶してそのまま授賞式に出席したという逸話がある。その時わずか12歳。ディズニーといえば、ブッシュ親子とも親密な共和党支持の会社、そこにたてつく正義感であるサラはディズニーのブラックリストに載ってしまったので、それ以後ディスニーの映画には出演していない。