プリティ・ベビー
2003/4/21
Pretty Baby
1978年,アメリカ,109分
- 監督
- ルイ・マル
- 脚本
- ポリー・プラット
- 撮影
- スヴェン・ニクヴィスト
- 音楽
- ジェリー・ウェクスラー
- 出演
- ブルック・シールズ
- キース・キャラダイン
- スーザン・サランドン
- フランシス・フェイ
1917年のニューオリンズ、娼婦を母に持ち、娼館生まれの12歳の少女ヴァイオレット、弟の世話など下働きをして過ごしていたが、ついに客をとることに。しかし、娼館育ちのヴァイオレットは嫌がるよりもむしろそれを喜ぶようだった…
ルイ・マルがアメリカに進出し、子供モデルとして有名だったブルック・シールズが少女娼婦を演じるということで話題を呼んだ作品。若かりしスーザン・サランドンもヌードを披露と、話題性ばかりが先行するが、さすがにルイ・マル、映画としてしっかりと作りこまれている。
この映画のブルック・シールズはかわいいというよりは痛ましいという印象。もちろん少女娼婦という設定だから、「天真爛漫な」という設定ではないだろうとは思ったけれど、この少女のキャラクターはかなり痛ましい。一面では無邪気であるけれど、むしろ逆にそれが呼ぶ悲劇というか、娼婦の世界しか知らない少女が生きることのつらさ、世間とのずれ、美しさを持ってはいるけれど、それは子供らしいかわいさとは違うものでありながら、心は依然として子供の身勝手さを抱えている。そんな複雑なキャラクターをブルック・シールズが見事に演じているとはいわないけれど、演技の落ち着かなさというかまばらな感じが逆にその気まぐれなキャラクターにフィットしているような気もする。裸体のあまりに子供じみた体型も痛ましさを増す要素になっている。
そんなブルック・シールズに引きずられるように(もちろん引きずられているわけではないが)物語も痛ましく、そして気まぐれである。物語の焦点が定まらず、散漫であるという印象も与える。しかしおそらくこの映画は、一つの物語を語ろうとするドラマではなく、この時代、この場所をリアリズム的に描く一種の風俗画であるのだと思う。ヴァイオレットとは時代の象徴的な存在であり、そこには戦争の影があり、南部ならではの人種意識があり、倫理観があり、逆におおらかさもある。物語が焦点を結ばないというのは映画の最後まで続く。終わり方もかなり宙ぶらりんな感じで終わります。私はいいと思いますが、最後まで盛り上がりのない展開という言い方もできるかもしれません。
簡単に言ってしまえば退屈なわけですが、退屈な中にもいろいろと考えることがあるし、映像なんかもなかなか美しいし、音楽もなかなかきれいというか、さりげなく映画にあっているし、やはりブルック・シールズは気になるし、という映画なわけです。私としては娼館の主人がなかなかいいと思いもしました。