ベッカムに恋して
2003/5/3
Bend it Like Beckham
2002年,イギリス=アメリカ=ドイツ,87分
- 監督
- グリンダ・チャーダ
- 脚本
- グリンダ・チャーダ
- グルジット・ビンドラ
- ポール・マエダ・バージェス
- 撮影
- ジョン・リン
- 音楽
- ジャスティン・クリシュ
- 出演
- バーミンダ・ナーグラ
- キーラ・ナイトレイ
- ジョナサン・リス=メイヤーズ
- アヌパム・カー
- アーチー・パンジャビ
- アーミト・チャーナ
イングランドに住むインド系の高校生ジェスは何よりもサッカーが好きで、ベッカムにあこがれていた。いつものように公園で男の子に混じってサッカーをしてるところを地元のサッカーチームの女子選手ジュールズに認められ、サッカーチームの練習に参加。監督のジョーもその実力を認めるが、ジェスの家は保守的なインド人家庭、娘がサッカーをすることをよく思わず、ジェスは両親に隠れて練習に通うことに…
ケニヤ生まれのインド系イギリス人グリンダ・チャーダの監督作品。イギリスにインド系は多いけれど、彼らを描いた映画はあまりなく、監督もあまり聞かないなかで出てきたヒット作。ミーハーな造りにはせず、しっかりとしたヒューマンドラマになっている。
これは完全に『リトル・ダンサー』。少年/少女が自分のやりたいことを見つけ、親に反対されてくじけそうになるんだけれど、理解のある指導者のおかげもあって自分の意思を貫き通していく。この映画のほうが『リトル・ダンサー』より少々複雑で、いろいろな問題が絡み合っているけれど、基本的には同じ。イギリス人はきっとこんな話が好きなんだ。そして日本人も好きなんだ。こういう成長物語はどこでもうける。
この映画は『リトル・ダンサー』と比べると、家族というものがクローズ・アップされる度合いが大きいように思える。おそらくインド人の文化が家族というものを重視するからそういうものになったのだろう。それによって家族というものがうまく描ける一方で、そのことがインド人がイギリス社会からやや阻害された存在であり続ける原因の一つになっているのだということも思い知らされる。
ジュールズのように最初からまったく偏見を持たない人もいるけれど、やはり偏見を持つ人もいるわけで、インド人が彼らのコミュニティにこもるのは、文化を大切にし、家族を大切にするという面がある一方で、そのような偏見を存続させ、増長すらさせる面もある。
そのようになってはいけない、古い因習に縛られるのはやめなさい、偏見を捨てなさい、相手に対して自分を開くことも大事、などなどというメッセージをこの映画は送ってくる。
と、内容を語っているとやはり『リトル・ダンサー』と同じという印象が拭えない。この映画の独自性はといえば、監督や出演者がインド系であるということ。アイルランドやスコットランドの映画はたくさん撮られてきたが、イングランド内やロンドンにいる移民の姿はあまり捉えられてこなかった。その意味でもこの作品が日本に入ってきたことは(たとえそれがベッカム人気のおかげでも)喜ばしいことだと思う。もう一つは独自性とはいえないかもしれないが、サッカーの描写の仕方が非常にうまいということ。実際に出ている女優さんたちがサッカーをやっているわけではないと思うのだけれど、画の上では見事にサッカーをやっている。そして、音楽が非常にポップ。