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でんきくらげ 可愛い悪魔

2003/5/28
1970年,日本,84分

監督
臼坂礼次郎
脚本
白坂依志夫
安本莞二
撮影
上原明
音楽
八木正生
出演
渥美マリ
笠原玲子
金子研三
平泉征
草野大悟
preview
 編集者をしている姉を頼ってヒッチハイクで上京したゆみは、姉に美容学校に行くように勧められるが、そこには通わず、ミュージカルのオーディションを受けるが不合格。そこで出会ったフォトモデルの久子とアングラ俳優の五郎の3人で遊びに行く。久子はカメラマンの小泉を紹介し、モデルの仕事に誘う。まもなくしたある日の昼間、姉の恋人谷沢がゆみのところに訪ねてきて、二人で海へドライブにいく…
 渥美マリの軟体動物シリーズの第5作。いつものように渥美マリが自由奔放な女を演じ、男を翻弄していく物語だが、男を絡め取っ手ゆく小悪魔ではなく、のらりくらりと生きていくなんだか能天気な話。
review
 増村保造が監督した『でんきくらげ』と『しびれくらげ』の渥美マリはその肉体の魅力で自分の欲望を満たしていき、男を破滅させていくという小悪魔的なイメージが強かったが、この映画では男を翻弄するものの、破滅させるというのではなく、まず自分が楽しく生きることが大事という感じ。男に簡単に身を任せるけれど、それで何か自分を利するというのではなく、自分が楽しく生きるためにためらいがないというだけのこと。嫌なことはいや、好きなことはすき、悪い奴は悪い、いい奴はいい、そんなさっぱりとした(軟体動物のくせに)竹を割ったような性格。
 ということなので、軟体動物らしい面白みが半減してしまうのかと思いきやそんなことはなく、むしろその能天気さがとてもよい。増村保造は理屈っぽく、マッチョでありながらフェミニストという変なところを持っているがために、ひどくねじくれた感じで男女の関係を描き、それはそれで面白いのだけれど、映画が与えるメッセージとしては、この映画みたいに能天気であっけらかんとしているモノのほうがストレートに伝わってくる気がする。見終わって、すっきりと、世の中捨てたモンじゃないと思えるようなそんな映画でもあります。
 映画のつくりとしては決してうまいとはいえず、人物を妙に狭いところに押し込めた構図が多用されるのも少々気になるけれど、それなりに気を使ってというか、映画としての面白みが出てくるように映画を丹念に作っているという気はする。映画の最初のほうでゆみが街中でいわゆるファッショナブルな格好をしたモデル風の女性を見て振り返るというシーンがあるのだけれど、それが映画の最後のところで反復されたりして、そのあたりもなかなか面白いところでしょうか。などいろいろ細かく気を使っているのです。

 あとは、アングラ芝居というのが出てきて、この映画が撮られた70年にはまさにアングラ芝居全盛期という感じ。たくさんの人場舞台に上がって変な格好をしてただただセリフを叫んでいる。当時も今も決して芸術として評価が高いというわけではないけれど、そこには何か荒削りな現代性のようなものがあったのだと感じました。私はリアルタイムで体験したわけではないですが、トラックにのって街の中を練り歩くシーンなどを見ていると、現代的なアートと感じられるようなパフォーマンスの源流がそこにあるのかもしれないという気もしてきます。
 それから、全体的にBB(もちろんブリジット・バルドー。念のため)を意識しているらしく、フレンチなガーリーな雰囲気を出そうとがんばっている感じがします。「可愛い悪魔」というのもBBの1959年の主演作『可愛い悪魔』から取られたものナンじゃないかと思います。ついでに、フレンチポップも流れるし、渥美マリが歌う『可愛い悪魔』もちょっとそんな感じだし、終盤に60年代を意識したような映像もあります。和製BBといえば加賀まり子ですが、渥美マリだという説もあります。渥美マリが活躍したのは1970年前後の短い期間だけですが、加賀まり子は60年代前半からかなりの間活躍していたので、加賀まり子のほうが印象が強いのは仕方のないところ。今もがんばってますし。
 でも、BB的なキャラからいえばなんか渥美マリのほうが近いような気がするので、私は渥美マリに一票。唇の感じとか、ロングヘアーもBB的イメージに合っています。

シリーズ 第1作 『いそぎんちゃく』
第2作 『続・いそぎんちゃく』
第3作 『でんきくらげ』
第4作 『夜のいそぎんちゃく』
第5作 『でんきくらげ 可愛い悪魔』
第6作 『しびれくらげ』
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本60~80年代

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