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アバウト・シュミット

2003/5/29
About Schmidt
2002年,アメリカ,125分

監督
アレクサンダー・ペイン
原作
ルイス・ベグリー
脚本
アレクサンダー・ペイン
ジム・テイラー
撮影
ジェームズ・グレノン
音楽
ロルフ・ケント
出演
ジャック・ニコルソン
ホープ・デイヴィス
ジューン・スキップ
ダーモット・マローニー
キャシー・ベイツ
preview
 66歳のウォーレン・シュミットは長年勤め上げた会社を定年退職することになった。荷物をまとめて職場をあとにし、定年記念パーティーに出席、その夜離れて暮らす娘ジーニーからも電話があったが、ウォーレンはジーニーの婚約者ランドールが気に入らない。翌日から暇をもてあましたウォーレンは恵まれない子供のための基金に参加し、“養父”となった6歳の少年に手紙を書いたりする。そんなある日、妻のへレンが急死してしまって…
 老境に入ったジャック・ニコルソンが定年退職し、生きがいを失ってしまった男を熱演したハートフル・コメディ。非常に地味な映画だが、それなりに見所もあり、大人な感じもして楽しめる。キャシー・ベイツのセクシー・ショットも見逃せない。
review
 老人というには少し若い感じもしますが、とりあえず現役を退いたという意味で老境に入った男ということで、「老人モノ」のジャンルに入ると思うのですが、ハリウッド映画でも老人モノの映画にはまずはずれがないと私は思います。有名どころでは『ドライビング・ミス・デイジー』なんてのもありましたが、『マグノリアの花たち』(『マグノリア』ではない)とか『フライド・グリーン・トマト』とか、名作と呼んでもいいような映画が結構あります。『コクーン』なんかもそのジャンルに入るかもしれないし。
 そんな老人モノの一つとしてこの映画を見ると、老人モノの中では並の出来というところ。面白いところといえばジャック・ニコルソン演じるウォーレンの捉えどころのない性格というか、行動からなかなか本心が見えてこないキャラクターがなかなか面白い。老人というか60過ぎたおじさんっていうのはみんなどこかそういうところを持っている。それは自分がそれまで生きてきた自信と、それでも拭えない不安と、そのせめぎあいの中で、若いうちは不安を表に出しても許されるけれど、もういい年になってくると不安を不安として出すのが許されないと思ってしまったり、恥ずべきことだと考えたり、そのようにして何かそういう行動パターンが築かれていくような気がする。捉えようによっては偏狭と見ることもできるだろうけれど、もう一面では理不尽に見えても実はそこに経験に根ざした理のようなものがあったりすることもある。
 しかし、そういうおじさんというのは大概説教くさく、人の話を聴かず、譲歩することもあまりないので、若者や奥さんから疎んじられてしまう。そのあたりをこの映画でジャック・ニコルソンはうまく演じていると思う。

 しかし、そのようなキャラクターはあまり映画的ではなく、老人モノでいいキャラクターを発揮するのは大概おばあさん(あるいはおばさん)であり、この映画でも観客を一番にひきつけるのはキャシー・ベイツだと思う。そのあたりがこの映画の弱いところで、全体的にまとまっていて面白い話し出し、キャラクターも立っているし、コメディとしてもクスリとするところが結構あって面白いんだけれど、全体としてはなんだか印象が薄い。それは映画の中心であるはずのジャック・ニコルソンが(あの顔なのに)なんとなく印象が薄く、映画全体としてのしまりを少し欠いてしまったからだ。
 映画を見終わってまず思ったことといえば、なんだかフォスター・ペアレンツの勧誘のための映画みたいだ、ということで、もちろんフォスター・ペアレンツになることが悪いとはいわないけれど、映画としてはなんだか腑に落ちないものを感じてしまう。そこにアメリカの善意の押し売りのようなものを見てしまうのは、悪意を持って見すぎなのかもしれないけれど、何かそういうきな臭さを感じてしまいました。
 素直に見れば、なかなかいい映画だと思うのですが、最近どうもハリウッド映画に対して、そういう悪意を持ってみてしまうのです。
 本当は、素直に見て楽しむのがいいと思うな。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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