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飛行士の妻

2003/6/4
La Femme de L'Aviateur
1980年,フランス,107分

監督
エリック・ロメール
脚本
エリック・ロメール
撮影
ベルナール・リュティック
音楽
ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演
フィリップ・マルロー
マリー・リヴィエール
アンヌ・ロール・ムーリー
マチュー・カリエール
preview
 郵便局で夜勤をするフランソワは恋人のアンヌの部屋の配管工事の件で朝アンヌの部屋に行き、メモを残そうとするがペンが出ずにペンを買いに戻る。その間にアンヌの元恋人でパイロットのクリスチャンがアンヌの部屋にやってくる。クリスチャンの用事は奥さんとパリに住むことにしたから、きっぱり別れようというものだったが、アンヌのアパートに舞い戻ったフランソワは二人がそろってアンヌの部屋から出てくるところを目撃してしまう…
 80年代のロメールのシリーズ「喜劇と格言劇」の第1作目となる作品。ロメールらしい理屈っぽさに、ミステリー的な要素が加わって、ただの恋愛関係にとどまらないロメール的世界が一つの完成形として立ちあわられる秀作。
review
 ロメールといえば、うじうじとした男とちっとも進まない恋愛模様。そして、哲学的な会話。淡々とした映像の中で表情と言葉で映画を作っていくという印象がある。登場人物も少なく、セリフが映画の重きをしめているということで、一見すると簡単に作ってしまっているように見えるし、どこかアドリブじみたところが感じられるが、実際はかなり緻密な計算の上で作られているのだろう。この映画の冒頭の郵便局の場面もただ郵便局を映しただけのように見えるが、その中に主人公のフランソワがいて、そのまま外へとカメラが移動していくところを見ると、郵便局を借り切るかして作り上げたシーンなのだろう。公園のシーンなんかも遠くのほうで出来事が起こることからしてカメラに映るすべての場所を管理して人物を配置して動かすという緻密な努力がなされているように思える。
 そのあたりの緻密さによってロメールの物語はいつも自然なものとなる。ドキュメンタリー的というか、アドリブ的というか、セットの上で演じられるドラマではなく、どこか即興じみたドキュメンタリー的なものであるような印象を与える。そこがロメールの魅力であり、ロメールらしさということで、それはこの作品でも存分に楽しむことができる。バスのシーンなんかも非常に面白い。

 ロメールらしさというのは、そのようなことで、それはこの映画のよさの一つでもあるけれど、この映画がロメールの作品群の中でも異彩を放っているのは、これの作品がミステリー的な要素を持ち、他の作品とは違う展開力を持っている点にある。一般的なロメールの作品といえば、ドラマを転がすのは恋愛で、ほれたはれたで1時間半から2時間の時間が過ぎる。この映画も基本的にはそうなんだけれど、恋愛関係とは基本的に関係ない(けれども、関係が出てくるかもしれないということをほのめかしてもいる)リュシーが登場して、物語にひねりを加える。主人公であるフランソワには隠された事実が謎を呼び、ある種の謎解きが問題として観客の前に提示される。
 そのミステリー的な展開が、面白くはあるけれど、単調な印象をも生むロメールの作品に一つのスパイスとなって映画の面白みを増す。ロメールの作品として傑作というよりは、フランス映画としてひとつの傑作だと思います。筋金入りのロメールファンには邪道かも。私は好きです。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: フランス

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