メイド・イン・アメリカ
2003/6/11
Made in America
1993年,アメリカ,110分
- 監督
- リチャード・ベンジャミン
- 脚本
- ホーリー・ゴールドバーグ・スローン
- 撮影
- ラルフ・ボード
- 音楽
- マーク・アイシャム
- 出演
- ウーピー・ゴールドバーグ
- テッド・ダンソン
- ウィル・スミス
- ニア・ロング
カリフォルニアに住むサラはアフリカ回帰をうたう書店兼雑貨屋のような店のオーナーで、成績優秀の娘のゾーラと二人暮し。ゾーラはある日、今は亡き父親のチャーリーの血液型がO型でAB型の自分が娘ではないことに気づく。サラは実は静止バンクで精子の提供を受けたのだと告白し、サラは父親が誰かを知ろうと精子バンクに親友のティ・ケイクと向った。
ウーピー・ゴールドバーグ主演のハートウォーミング・コメディ。当時はDJ・ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスのラッパーとして知られていたウィル・スミスがコミカルな演技を見せ、未来のスターの片鱗を覗かせる。ウーピーとテッド・ジョンソンとは私生活でもこのあとしばらく交際があったらしい。
リチャード・ベンジャミンはもともと役者だったが、監督に転身して以来、軽いコメディを中心に結構たくさんの作品を撮っている。代表作というのは特にないけれど、『マネー・ピット』とか『恋する人魚たち』なんかを撮っている。その作風は非常にオーソドックスで、基本に忠実。あまり下品にはならず、しかしコメディとしての体裁を保ち、ファミリー向けなんかにはいいかなという作品。
この作品も、とてもオーソドックスで普通。確かに面白いけれど、それ以上ではない。ただ、この作品では黒人と白人の関係という、いつまでたってもアメリカ人の心からはなれることがないらしい問題を扱って、しかもその関係を笑いにするのではなく、それはそれで一つの物語として、白人のバカさ加減とかそのあたりを笑いに持っていっているところがうまいと思う。
この人は環境問題なんかにもかかわっている人らしく、おそらくいわゆるヒューマニストで、人種問題もまたヒューマニスティックな視点から見つめる。コメディという敷居の低い作品を撮りながら、そこにヒューマニティの問題を織り込んでいって観客の思考を促す。しかもあまり深刻にならないようにするために白人のキャラクターとしてちょっと考えが浅いというか、黒人たちと比べると浅はかな人物を置く。ちょっといやらしいという気もするけれど、彼なりの真摯な取り組みと受け取るのがいいだろう。
それとかみ合うようにこれまたヒューマニティの権化のようなウーピー・ゴールドバーグがいる。彼女はコメディアンで、表面上は辛辣な発言をしているように見えるけれど、それはある種のギャグとしての攻撃であって、よく見ると非常にヒューマニティを感じさせる言動をしているし、映画の中でもそのような役を演じている。最初が『カラー・パープル』だったというのもあるだろうけれど、基本的にヒューマニティにあふれる人間の役が多い。
なので、この映画は非常に暖かい。諍いとかドタバタとかそんなことがあっても決して冷たくならず、ずっと暖かい。ラッパーで社会に反抗的なはずのウィル・スミスまで暖かい。うーん、この暖かさは何なのだろう? キリスト教的ヒューマニズムだろうか? 日本でこういう暖かさというとどうも宗教じみた感じを受けてしまうけれど、アメリカの場合もそういうことなのかしら?