タイムトラベラー/きのうから来た恋人
2003/6/15
Blast from the Past
1999年,アメリカ,113分
- 監督
- ヒュー・ウィルソン
- 脚本
- ヒュー・ウィルソン
- ビル・ケリー
- 撮影
- ホセ・ルイス・アルカイネ
- 音楽
- スティーヴ・ドーフ
- スティーヴ・ティレル
- 出演
- ブレンダン・フレイザー
- アリシア・シルヴァーストーン
- クリストファー・ウォーケン
- シシー・スペイセク
- デイヴ・フォリー
1962年、発明家のカルヴィンはロスに水爆が落ちたと思い込み、身重の妻を抱え、地下に作ってあったシェルターへと避難した。食糧の備蓄を考えて35年間たったら地上に出ることにし、シェルターで産まれた息子アダムにさまざまな教育を授けながら35年を過ごした。35年後、満を持して地上へと出たカルヴィンは地上のあまりの荒廃ぶりに驚き、地下シェルターに戻って心臓発作を起こしてしまう。そして代わりにアダムが地上に出て必要なものを調達してくることに…
ブレンダン・フレイザー主演の脇をクリストファー・ウォーケンとシシー・スペイセクという名優が固め、しっかり仕上げたなかなか良質のラブ・コメディ。
なんてことはないといってしまえばそれまでですが、35年という時間のギャップがとても綿密に計算されていて、そのギャップの何を使えば笑いを取れ、何を使えば観客の郷愁を誘い、何を使えば物語にひねりを加えられるのかをよく考えて作ってある。
コメディというものは、笑えればいいことは確かだけれど、笑えればいいからプロットなんかも適当でいいというのは間違いで、実際は笑い部分のところで破綻が起きないように綿密な計算が必要なはずだ。この映画でポイントになっているのは、地下シェルターの上に住む変な男とイヴのルームメイトのゲイであるトロイである。シェルターの上に住む男がアダムたちを神と取り違えることで彼は騒がれることなく世間に出られたわけだし、トロイがアダムを柔軟に受け入れたからこそアダムとイヴの関係が破綻せずにすんでいったということ。それらの大きな器によってアダムの行動が自由になり、さまざまな笑いが生まれる土台が作られたということなわけです。
まあ、アダムとイヴという名前からもわかるように、聖書の創世神話をモチーフにしていたりするわけですが、そのあたりがどう映画に反映されているかというのはわかりません。少なくともアダムが穢れなき無垢の男だということはあるわけですが、アダムとイヴは楽園を追放されるのか? 追放されるのだとしたら、邪悪な蛇の役割をするのは誰なのか? ということはまったくこの映画には出てきません。なので、たいした意味はないということでしょう。単純に無垢さの象徴としてアダムという名前を使い、その運命的な相手としてイヴという名前を使った。それだけのことなんじゃないかと思います。
ので、とりあえず笑っていればいいというコメディ映画。監督のヒュー・ウィルソンといえば『ポリス・アカデミー』の監督。無意味なコメディは得意技。思わせぶりな名前の付け方もたいした意味はないのでしょう。