猟奇的な彼女
2003/7/12
My Sassy Girl
2001年,韓国,122分
- 監督
- クァク・ジェヨン
- 原作
- キム・ホシク
- 脚本
- クァク・ジェヨン
- 撮影
- キム・ソンボク
- 音楽
- キム・ヒョンソク
- 出演
- チョン・ジヒョン
- チャ・テヒョン
- キム・インムン
- ソン・オクスク
漫然と日々を過ごす大学生のキョヌは、駅のホームから落ちそうになっていた酔っ払った美女を助ける。見た目は好みだが酒に酔った女は嫌いなキョヌは彼女を無視していたが、車中で彼女はキョヌに「ダーリン」と呼びかけたあと倒れてしまったために彼女の介抱をする羽目になり、ホテルで休ませ、自分がシャワーを浴びているところに警察がやってきて留置所に入れられてしまった。そこからキョヌと“彼女”との変わった関係が始まる…
インターネットに書き込まれた体験談が話題を呼んで、単行本化された物語が原作。原作はベストセラーとなり、映画も大ヒット、ドリームワークスがリメイク権を獲得したらしい。
映画としてのインパクトはあるけれど、一つの物語としてみたときには少々語りに弱さが見られる気がする。“彼女”の持つキャラクターが特異だというだけで2時間の映画を撮るのはなかなか難しい。そして“彼女”(名前がないというのはなかなかいい設定の仕方だと思うが)の極端さというのが決してエキセントリックなものではなく、誰もが少しずつは持っている身勝手な部分を限りなく延長したものに過ぎないというところからその弱さは出てくるだろう。
この映画はエキセントリックな物語として語られながら、実は非常に身近な物語なのだ。逆に言えば、実は身近な物語なのにエキセントリックなものとして語られてしまっているところの齟齬がこの映画がどうも落ち着かない理由なんじゃないかと思う。
それでも主役のチョン・ジヒョンはかわいいし、なかなかうまくもあるので、物語はうまく転がっていく。一方のキョヌのほうの情けなさもバランスとしてなかなかいい。一つ一つのエピソードの突拍子もなさはコメディの一つのネタとして面白いものもある(ちょっとオチが読めすぎるという欠点もある)。ただ、そんなネタをどんどん繰り出し、面白くしよう面白くしようとすることで、映画はどんどんテンポアップしてしまう。どたばたコメディ映画ならそれでいいのだが、この映画は“彼女”の審理こそが物語にとっては重要で、チョン・ジヒョンはそれを懸命に表現しようとし、それを物語の骨格にしようとしているのだが、映画がテンポアップしてしまうことで、そのあたりの描写がおざなりになり、重要なはずの“彼女”の内面的な葛藤が見えてこなくなってしまったように見える。
それはつまり、映画のテンポが速すぎて、観客が“彼女”の内面を探るための「間」を与えられないということであり、それは観客が映画に入り込むことを阻止してしまっているということでもある。
だから結局、映画を見た感想としてはちょっと珍しい話を外から眺めてみただけ感じにならざるを得ない。インターネットの掲示板ならそれでいいのかもしれないが、1本の映画にするならば、その珍しい話のエキセントリックさを突き抜けるまで極端化させるか、あるいは“彼女”の内面の葛藤という物語をもっと掘り下げて、1本のドラマとするかしないと苦しかったんじゃないかと思う。
そう考えると、いつもは期待できないアジア映画のハリウッドのリメイクというのが逆に期待できるような気もする。ハリウッドは1本の映画として観客を引っ張り込むということにかけてはさすがに1枚も2枚も上手ということで、こんな話を映画にするのは得意でしょう。