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マイ・ビッグ・ファット・ウェディング

2003/7/13
My Big Fat Greek Wedding
2002年,アメリカ,96分

監督
ジョエル・ジュマック
脚本
ニア・ヴァルダロス
撮影
ジェフリー・ジャー
音楽
アレクサンダー・ジャンコ
クリス・ウィルソン
出演
ニア・ヴァルダロス
ジョン・コーベット
マイケル・コンスタンティン
レイニー・カザン
ジア・カリデス
preview
 シカゴに住むギリシャ系の30歳の独身女性トゥーラ、自分でもさえない見た目を気にする彼女は家族が経営するレストラン“ダンシング・ゾルバ”でウェイトレスをしていた。そんな彼女がコンピュータを習いに大学の講座を受けに行ったことから徐々に変わって行き、運命的な恋に出会うというお話。
 主演のニア・ヴァルダロスが自分の実体験をもとにやっていたひとり芝居を気に入ったリタ・ウィルソンが旦那さんのトム・ハンクスとともに映画化を企画、ニア・ヴァルダスが自ら脚本を用意し、映画化にこぎつけた。低予算ながらアメリカ全土でロングランを重ね、大ヒットとなった。
review
 さすがにヒットするだけあってこの映画は面白い。なんといっても映画のテンポがよくて、一定のリズムで展開されていくので、最後まで同じテンションで楽しく見ることができる。そして主演のニア・ヴァルダロスがなんといっても魅力的、撮影時41歳だったそうだが、30歳という役もそれほど無理なくこなし、しかも魅力的、自らチャンスを掴み、自らの脚本で主演するということからしてもこの映画は完全に彼女の映画で、その中でやはり一番光り輝いているのはすごいことだと思う。

 この映画はとても面白くていいと思うのですが、しかし一方で、この映画がヒットするということにアメリカの抱える問題の一端があるのではないかと思うので、今日は少し難しい話をしようと思います。ネタばれにもならなくて一石二鳥。
 アメリカはいわゆるマイノリティの人口比率がどんどん増加し、特にヒスパニック(ラティーノ)の人口はアフリカ系(ブラック)を抜いてマイノリティのトップとなり、カリフォルニア州では白人の人口が50%を切った。つまりカリフォルニアではすでにマイノリティはマイノリティではなく、カリフォルニアに限らず都市部では概してマイノリティの人口が白人を上回っている。つまりアメリカとはすでに白人のアメリカではなくなっているはずだ。しかし、映画を見る限り、マイノリティはあくまでマイノリティであり、マイノリティの文化は好奇なものとして描かれる。この映画もまたそのようにしてギリシャ系の文化が白人社会からは奇異なものに見えるということを前提としている。これはもちろん白人が政治的・経済的・文化的な分野でいまだヘゲモニーを握り続けているということであり、ハリウッドでもまたそうだということを意味している。
 そのような環境の中でハリウッドのメジャー・スタジオに話を持っていくことなく、マイノリティのネットワーク(とはいっても、純粋なマイノリティというわけではなく、マイノリティと結婚したトム・ハンクスなどその協力者も含まれてくるわけだが)の中で作り上げたということは重要なことなのかもしれない。
 とは思うが、結局のところこの映画の笑いというのは白人がヘゲモニーを握るアメリカ社会の中のマイノリティの文化の面白さを笑いにしているだけだ。それは近代と前近代との摩擦であって、近代とポスト近代の摩擦ではない。トゥーラの父親のギリシャ文化への極端な固執はある種のファンダメンタリズムに通じる。それはポスト近代的な反応である原点回帰(典型的にはキリスト教原理主義)の一種であると見ることもできるかもしれない。それは彼の語るギリシャ文化というものが決して本物のギリシャ文化ではなく、彼自身がギリシャとはこうだとかたくなに信じる、あるいはこうあって欲しいと望むギリシャであるからだ。この映画はそのズレをも笑いにする。そのような意味ではポスト近代をも取り込んでいえるといえるのかもしれないが、この映画がヒットしたのはおそらくそのずれの部分を笑うということと、人種には関係ないロマンティックな物語という点にあると思われる。
 そのようにして人種による文化の違いを笑いに還元してしまうということは、人種の坩堝といわれながら本当には各人種・民族の文化を取り込みきれていない、差異を差異として認識して、それが並存する文化を作るのではなく、あくまでサイトは中心(それはもちろん白人男性文化)からのズレとして認識してしまうというアメリカの特徴(あるいは問題)を示すものだと思います。今はそれでいいかもしれないけれど、どんどんマイノリティの人口が増えて来るにつれ、それが問題として顕在化してきているような気がします。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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