ナイン・ソウルズ
2003/7/18
2003年,日本,120分
- 監督
- 豊田利晃
- 脚本
- 豊田利晃
- 撮影
- 藤澤順一
- 音楽
- dip
- 出演
- 原田芳雄
- 松田龍平
- 千原浩史
- 鬼丸
- 板尾創路
- マメ山田
- 伊藤美咲
- 京野ことみ
- 唯野未歩子
父親を殺して刑務所に入れられた金子未散、彼が入った13号室の囚人たちは未明に脱獄、未散も彼らと一緒に脱獄した。脱獄した9人の男たちは同室だった自称偽札王の山本の「小学校にお宝を埋めた」という言葉を信じてその金を探しに奪ったトラックで旅を始めるが、9人ものつわものが一緒に旅をしてうまくいくうまくいくわけもなく…
『青い春』の豊田利晃が再び松田龍平を起用して作った脱獄ロード・ムービー。9人の脱獄囚はそれぞれにキャラクターを持ち、うまく物語にバリエーションを持たせているが、基本的には一つの物語に修練する。それが吉と出るか凶と出るか?
さまざまな過去を持つ9人の脱獄囚という発想は誰でも思いつきそうで、映画にしようとするとなかなか難しいものかもしれない。しかしこの映画はそのあたりのキャラクターの組み立て方が非常にうまくて、映画の前半はうまい具合に映画を進めていく。それは一人一人のキャラクターがわかりやすくできているということが大きいわけで、爆弾魔とかAVの帝王とか暴走族とか、ある意味で典型的な犯罪者を極端化したものとしてキャラクターが登場するのがいいのだろう。
そんな中で物語の中心となる虎吉(原田芳雄)と未散(松田龍平)のキャラクターだけがなかなか浮かび上がってこない。それはもちろん映画の後半にその二人に焦点を当てて、物語のオチというか、映画としての一つのテーマを提示しようということが狙いなのだろう。それは映画の構成としては成功しているとは思うが、実際のところ映画の後半よりも前半のほうが面白く、主人公格の二人の物語よりも脇役となった7人の物語のほうが興味深い。そのあたりがこの映画の問題というか、難しいところで、とっつきは面白いんだけれど、全体としてみれば散漫になってしまうし、一つ一つのエピソードに深みがないという感じにもなってしまう。
それはなぜかと考えると、映画の構成としては2人と7人に差をつけているのだが、内容的には差がなくて、9人の誰を取ってもあまりに格好よすぎる。さらに言えば、彼らにかかわってくる脇役の人たち(特に女性)も格好よすぎる。みんながみんな格好よくて、それぞれの物語を持って、それぞれの結論を求めて、そのすべてを映画に組み込んでしまうと、なんだかすべて同じような話が並んでしまう印象となり、映画にメリハリがない感じになってしまうのだろう。
9人いれば何人かは自分勝手だったり、情けなかったり、格好悪かったりするのが普通だろうし、そのほうが映画にもメリハリが出るような気もするが、このように映画のすべてを格好よくまとめるのがこの監督のスタイルなのだろう。メッセージとかテーマとか内面的なものとかそういったものよりも、スタイリッシュさを映画に求めるならば、この映画は成功していると思う。
父と子を中心とした人間関係というテーマもなんだかポーズというか、現代の社会とかかわりがあるというスタンスの格好よさみたいのにつながっていくような気がした。