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ベストセラー

バニラ・スカイ

2003/7/28
Vanilla Sky
2001年,アメリカ,137分

監督
キャメロン・クロウ
原案
アレハンドロ・アメナバール
マテオ・ヒル
脚本
キャメロン・クロウ
撮影
ジョン・トール
音楽
ナンシー・ウィルソン
出演
トム・クルーズ
キャメロン・ディアス
ペネロペ・クルス
カート・ラッセル
ジェイソン・リー
preview
 33歳にして大出版社のオーナーであるデヴィッド・エイムスはジュリーという恋人がいたが、自分の誕生日パーティーで親友のブライアンの連れてきたソフィアに一目惚れ、恨めしげな顔をして見守るジュリーを置いてソフィアを愛車のポルシェで家に送っていった。
 一方、ラテックスの仮面をかぶったデヴィッドらしき男が留置所で精神分析医の尋問を受けている。デヴィッドとジュリー、そしてソフィアとの物語はその仮面の男の独白であるようなのだが…
 スペインでヒットしたアレハンドロ・アメナバール監督の『オープン・ユア・アイズ』にほれ込んだトム・クルーズがリメイク権を買い、自らスタッフを選んで製作した作品。監督は『ザ・エージェント』でもトム・クルーズと組んだキャメロン・クロウ。トム・クルーズにとってはさらにペネロペ・クルスのハートも掴み、願ったりかなったりという作品。
review
 この映画の導入はニューヨークの空撮で、非常にオーソドックスなハリウッド映画の入り方なわけですが、その直後に来るのが夢のシーン、誰もいないニューヨークにひとり取り残されるというモチーフの夢をトム・クルーズが見るというもの。「夢」というのがこの映画にとって非常に重要な意味を持ってくることを考えると、これまたわかりやすい始まり方といっていい。そして最後まで見ても、すべてがすっきり収まって、非常に素直な語られ方をしているという印象がある。
 どうもこの映画はわかりにくいというか、「結局どうなの?」という謎が残るという印象が強いようだが、実はそれは作り手側がわかるように作っていないから当たり前のことで、「わかった」と思ってしまうほうがおかしいのかもしれない。しかし作り手がわとしてもただわかるように作っていないだけではなく、わかった気になるように作ってもいる。「わからない=答えがない」ということはつまり、どんな答えを導き出してもそれは間違っていないということになるのだ。だからこの映画を見て「わかった気」になることはとても容易だし、それは実際にわかったといっても間違いではない。しかし本当にこの映画(の物語)を理解することは決してできない。
 最近はどうもそんな風にして、決してわからないのだけれどわかった気になる映画というのがとても多い。代表格は『マトリックス』で、わかった気になるけれど、しかしわからないところもあって、だからどうしても続編を見てしまうけれど、それまたわかった気になるだけ。結局3作目を見ても同じような印象が残るだろうということは想像に難くない。

<少々ネタばれ気味に…>
 この映画で、尋問を受けているデヴィッドがさかんに口にするのは「陰謀」という言葉だ。それが意味するのは、映画が語っている事件が誰かの(デヴィッドによれば“7人の重役”の)陰謀であるという物語であり、もしそれが本当だったならば、誰か悪者がいて、その悪者の計画によって主人公が振り回されるというまったくすっきりとした物語になる。サスペンス映画を見るものは最終的に答えが用意されていることを期待して、自分なりに推理を進めていく。その時この陰謀という形式は王道であるといえるだろう。そんな王道をほのめかしながら、最後にはその王道を踏み外して一気に意外な展開に持っていく。この辺りの映画の組み立て方は先日の『マグノリア』を思い出させもする。
 さて、この映画のテーマは「現実と夢」であると思う。現実と夢の区別とはあいまいなもので、今現実と信じて生きている生が夢であるかもしれないという話はいつからかわからないがずいぶん昔から語られてきたことである。それを改めて現代(数字上では2001年になっているが、実際はおそらく近未来)において問い直そうというのはいったいどういうことなのか? この映画の結末は素直に見るとなんとも納得いかないが、最後にこれもまた夢であるというほのめかしがあったことで、何とか形になっている。そしてそれもまた「わかった気にさせる」仕掛けの一つなのである。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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