穴
2003/8/7
The Hole
2001年,イギリス,102分
- 監督
- ニック・ハム
- 原作
- ガイ・バート
- 脚本
- ベン・コート
- キャロライン・イップ
- 撮影
- デニス・クロッサン
- 音楽
- クリント・マンセル
- 出演
- ソーラ・バーチ
- デズモンド・ハリントン
- ダニエル・ブロックルバンク
- ローレンス・フォックス
- キーラ・ナイトレイ
- エンベス・デヴィッツ
森の中から現れた傷だらけの少女、彼女は18日間も4人の高校生が行方不明になった事件の唯一の生き残りだった。何とか回復したリズは事件の真相解明のため警察から派遣された精神科医フィリッパに事件について語り始める。事の起こりは夏休み前のプレイボーン学園、学園一のプレイボーイであるマイクに恋をしてしまったリズが…
出演する作品で常に特異なキャラクターを発揮するゾーラ・バーチ主演のサイコ・サスペンス。サスペンスとしての内容はたいしたことないが、ゾーラ・バーチの芸達者ぶりで見ごたえある映画になっている。
穴に閉じ込められる。それだけで映画としての舞台設定は十分だ。これ以上何もしなくても、恐怖心があおられる。そして、結末がすでに明らかになっていることで、結末へ向ってどのように進んでいくのかを推測する楽しみも出てくる。ということで、前半はどれが真実でどれが嘘なのか、そのあたりを謎にして、うまい具合に話が展開していく。しかし、後半はそんな設定だけにひねりがなく、サスペンスとしては今ひとつ盛り上がらない内容になってしまった。
しかし、後半はゾーラ・バーチの独壇場ということで、ゾーラ・バーチの決していわゆる美形ではないけれど、基本的には美人でもあり、小悪魔的な魅力もあり、セクシーではないけれどエロティックな、そんな自分のキャラクターをうまく出して、映画を支配してしまっている。
この映画は(特に後半は)サスペンスというよりは、心理と性の物語であり、若者の性と狂気を結びつけ、それを赤裸々に語っていくというかなり強烈な内容になっている。
それならそれで面白いと思うのだけれど、前半に盛り上げたサスペンスの部分に後半も引きずられ、なかなかそのエロティックな部分は映画の前面には浮上してこない。これはゾーラ・バーチが主演、しかもパブリック・スクールが舞台といういわゆるティーンズ映画であるために、露骨にエロティックな部分が出てくるのを避けたのか、それとも単純に物語の構築上の力のなさなのか、それはわからないが、このエロティックな部分が表に出てくれば映画全体は前半と後半で雰囲気ががらりと変わり、メリハリも付いて、(好みは分かれることになると思うが)かなり面白い映画になったはずだ。
ということなので、このままでも後半は前半とはまったく違う映画だということに早めに気づいて、見方を変えてしまえば結構面白く見ることができるはずだ。あらゆる場面で登場する性的なほのめかしと、何故にそこまでセックスが重要なのかというおかしさに気づけば、まったく違う映画に見えてくる。
映画の語り方として、物語が転換するところで、観客に見方の転換を促さなかったところにこの映画の中途半端さがあるのだと思う。
これはこの映画がイギリスで作られたハリウッド映画であるという性格によるところもあるのかもしれない。完全なハリウッド映画なら、観客をぐいぐい引っ張っていっただろうし、完全なヨーロッパ映画なら、前半部分はプロローグ的なものにとどめて最初からエロティックな心理劇として観客に提示していたんじゃないか?と思う。
などとジャンル論に当てはめてみたところで、結局は中途半端だということでもあり、しかも頑張っていろいろと解釈してみても、見終わってもなんとも納得が行かない。でも、なんだかもやもやとしたまま終わってしまうのも映画の味なんだと考えれば、それほど悪い映画でもないかな。と思う。