世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す
2003/8/12
Earth vs. The Flying Saucers
1956年,アメリカ,83分
- 監督
- フレッド・F・シアーズ
- 原作
- カート・シオマグ
- 脚本
- ジョージ・ワーシング・イエーツ
- レイモンド・T・マーカス
- 撮影
- フレッド・ジャックマン・Jr
- 音楽
- ミッシャ・バカライニコフ
- 出演
- ヒュー・マーロウ
- ジョーン・テイラー
- ドナルド・カーティス
宇宙探査の計画を進める科学者マーヴィン博士、研究のため打ち上げる人工衛星は計画は何者かに次々と打ち落とされ、計画は一向に進まない、そんな博士のところには謎の光と玉が現れ、謎のノイズのような通信電波が送られてくる。それがなんだかわからないまま計画は進み、再びロケット発射の日を迎えたが、その発射の直前、空飛ぶ円盤が西の空から現れる…
宇宙人者SFの一作だが、初期特撮映画の名手の一人レイ・ハリーハウゼンによる特撮が見所、50年代の特撮がどんなものかを知るにはいいかも。
物語のほうはいかにもアメリカというか、別にアメリカに文句を言うわけではないですが、独善的で、世界の中心はアメリカだと考えていて、自分たちがする攻撃はすべて正義だとでも思っているんじゃないかという印象を与える物語なわけです。
まあ、物語をばらすことになってしまいますが、先ず宇宙人が人工衛星をバンバン打ち落としていって、ある日、UFOがやってきて、地球の上陸してきたところで、アメリカの軍が宇宙人を撃ち殺す。すると、宇宙人が反撃して、基地を全滅させてしまう。それにアメリカが反発し、宇宙人は話し合いを求めてくるんだけれど、宇宙人が猶予を与えた期間の間にアメリカは新兵器を開発して全面戦争に突入というわけです。
どう考えても、コミュニケーションの失敗から、アメリカが一方的に攻撃を仕掛けているようにしか見えないのだけれど、アメリカの言い分としては凶悪な宇宙人から世界を守るといってしまう。
相手が何を言おうとしているのか、何者なのか、そんなことには一切かまわず、自分たちに理解できないものは敵だとみなし、とにかく攻撃する。ここまで言ってしまうと、ちょっと極端だけれど、極端まで進めばそういう思想になってしまうようなアメリカの傾向がこの映画に現れているんじゃないか、しかもそれは今になって始まったことではなくて、50年代からあったんだろうということが推察できる。
ということで、結局はアメリカに文句を言うことになってしまうわけですが、そんなアメリカの嫌いな面が前面に押し出されているのがこの映画なわけで、どうもみていてむかむかしてくるのです。
ということで、どうにもむかむかしてきてしまうわけですが、この映画の真価はそんなどうにもならないアメリカではなく、いいほうのアメリカなわけで、それは特撮というところ。この映画の特撮は基本的にクレイアニメを基本としていて、それは多分アメリカよりもヨーロッパなんかで発達したもののような気がするけれど、それを特撮という形でうまく取り入れている。今の特撮とは全く質が違うもので、それが逆に面白い。「サンダーバード」の人形アニメにも通じる、このころの特撮らしい味がある。
それから、ランドバークが次々と壊れていくというSFのパターンがあるのも面白い。日本で言えば『ゴジラ』、アメリカで言えば『キングコング』あたりの印象が強いけれど、このころからすでに一つのスペクタクルとしてあったということですね。