007/ダイ・アナザー・デイ
2003/8/16
Die Another Day
2002年,アメリカ=イギリス,131分
- 監督
- リー・タマホリ
- 原作
- イアン・フレミング
- 脚本
- ニール・パーヴィス
- ロバート・ウェイド
- 撮影
- デヴィッド・タッターサル
- 音楽
- デヴィッド・アーノルド
- 出演
- ピアーズ・ブロスナン
- ハル・ベリー
- トビー・スティーヴンス
- ロザムンド・パイク
- リック・ユーン
- ジュディ・デンチ
サーフィンで北朝鮮に潜入したジェームズ・ボンドは、ムーン大佐と取引をする男に成りすまし、大佐を暗殺しようともくろんだ。しかし、成功直前に何者かからの正体を見破られ、大佐を追い詰め殺したものの自らも捕まって捕虜となってしまう。それから14ヵ月、拷問に次ぐ拷問に耐えたボンドは、捕虜交換によって解放されるのだが…
「007シリーズ」第20作目、そして製作40周年という記念碑的な作品。ボンドガールとして、ハル・ベリーとロザムンド・パイクの2人が登場し、これまでとは少し違う味付けとなった。
まず、ハル・ベリーが登場し、そのあとロザムンド・パイクが登場する。見た目から言うと、ロザムンド・パイクのほうがボンドガールらしい感じだけれど、格から言うとハル・ベリー。この2人の関係がどうなるのか、それがこの映画の最大の見所といえるだろう。しかし「男の映画」というスタンスは崩さず、あくまで、ボンド対ボンドガールという構図は守りきる。
そんな中、この映画でスパイの標的となるのは北朝鮮。いまやスパイするに値する「敵国」というのもすっかり減ってしまい、北朝鮮くらいになってしまったわけだが(一応キューバも出てくるけれど)、その北朝鮮の脅威も少々大げさに描かないと、スパイ映画の題材にはならないという感じだ。
「そんなことはありえねーだろ」と思うようなことが起こるのは「007シリーズ」ではある程度お決まりのことだが、今回のはそもそも北朝鮮にそんな財力と技術力があるのかという疑問から始まって、ありえないことだらけだ。
007のありえなさというのはむかしはボンドの使う道具とか、アクションとかその辺りに主にあったような気がするのだけれど、ここではどうも物語のほうにありえなさを感じてしまう。それは、アクションとか道具とかそのあたりはもっとありえないようなものを他の映画がどんどん生み出しているせいだろう。そしてそれと同時に冷戦構造が崩壊し、スパイ映画という構造自体に危機が訪れているということが物語として「ありえない」という印象を与えているのだろう。
言ってしまえば、製作が始まって40年が経ったこのシリーズは危機を迎えているのだと思う。このまま続けていっても、映画としてはジリ貧になってしまうことは目に見えている。だから、ボンドガールを2人にして、女性がなりたいと思う顔第2位に選ばれた(2003年調べ)ハル・ベリーを起用したりして、打開策を見つけようとしている。
<少々ネタばれへ>
ハル・ベリーが言う「恋が長続きしない」というセリフや、まれに見るハッピーエンドはハル・ベリーがこれからも登場するという前フリか? ハル・ベリーを継続的に出演させて、シリーズとして新たな展開を見せようとしているのか?という推測も働く。
それくらいのことをしないと、このシリーズの先は見えてしまっているし、それをやればまた結構面白く進めていけるのではないかと思う。この映画がスパイ映画としての限界、かなり無理のある物語にもかかわらず一応見れるものになったのは、女と女の闘いの面白さにあるのだと思う。なので、ぜひハル・ベリーには次の21作目にも出てほしいな。