メン・イン・ブラック
2003/8/21
Men In Black
1997年,アメリカ,97分
- 監督
- バリー・ソネンフェルド
- 原作
- ローウェル・J・カニンガム
- 脚本
- エド・ソロモン
- 撮影
- ドン・ピーターマン
- 音楽
- ダニー・エルフマン
- 出演
- トミー・リー・ジョーンズ
- ウィル・スミス
- リンダ・フィオレンティーノ
- ヴィンセント・ドノフリオ
移民局の検査官が違法移民を摘発、そこに現れた黒服の2人組、ひとりの違法移民だけに目をつけ、そいつを連れて行った。実はそれは宇宙人で、2人はいとも簡単に殺してしまった。
一方、NYPDの警官ジェームズは闘争する犯人を追いかけ、ついに追い詰めたが、それが実は人間ではなく宇宙人だと気づく。翌日上司に問い詰められているところに黒服の男が現れ、翌日エイリアンから地球を守る組織MIBの本部に呼ばれた…
コミックを原作としたスピルバーグ総指揮による軽いタッチのSFアクションコメディ。今みたいにスピルバーグ一家が大きくなかった頃のコメディタッチのSFを思い出させる佳作。
スピルバーグというと今じゃもうドリームワークスの大看板背負って、大巨匠、制作費もウン十億、何を作ってもヒットするという感じだけれど、80年代くらいにはまだまだ小さく、ドリームワークスはまだなくて、アンブリンが出来たのも確か80年代の半ば。そんな80年代の彼の作品は『E.T.』や『カラーパープル』だったけれど、製作総指揮となると『グレムリン』『グーニーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『インナースペース』と軽いタッチのSFが並ぶ。この映画はまさにその流れを汲んだ作品で、それが証拠に製作はドリームワークスではなくてアンブリン・エンターテインメントとなっている。
監督のバリー・ソネンフェルドは下はといえばコーエン兄弟作品のカメラマンとして有名になった人だけれど、『アダムス・ファミリー』で監督デビューしただけに、軽い感じのSFが好きなのでしょう。80年代なら、ジョー・ダンテが監督したところだろうけれど、ソネンフェルドはきっと(あくまで憶測)そのあたりの作品が好きで、スピルバーグ総指揮でこの作品がとれたことを喜んでいるだろうと思います。
B級映画が本当にはB級ではなくなり、興行的にはA級(というのはないけど)を上回ってしまうようになったのが、80年代のアンブリンの映画からの出来事だと思うので、コーエン兄弟というあくまでB級を志向するコーエン兄弟とともに歩んできたソネンフェルドもまたこんなまっとうなB級映画を撮りたかったのではないかと推測するのです。
などと、なんだかオタクなゴタクを並べてしまいましたが、この映画はあくまでB級映画で、だからこそ面白い。スピルバーグだってもともとはB級映画を撮っていて、80年代に自らが監督する作品ではいわゆる「いい」作品を撮っていくことでB級監督から脱皮していった。しかし、その裏には他の監督に撮らせた無数のB級作品があり、この人は根っこのところではいつまでたってもB級監督のままであると。そんなスピルバーグがB級に立ち帰って撮った作品がつまらないわけがないということです。
またゴタクになってしまいましたが、この映画の何が面白いかといえば、とにかくくだらない。真剣にくだらない。B級映画の真骨頂とは本当にくだらないことを本当に真面目にやること。くだらないことだからといって不真面目にやるとまったくもって面白くなくなってしまう。どれだけくだらないことをどれだけ真面目にやるかというのが、B級映画の価値を決めるのです。その意味ではこの映画はすばらしいB級映画。ドリームワークスで培った最高のCG技術をただ逆を言うためだけに登場するエイリアンにつぎ込む。この精神がたまりません。
それ以外でも、というかすべての部分で徹底的に作りこみ、B級映画だからこその好きのなさ、完璧さを生み出している。細部にいたるまで矛盾がないように組み立てられているからこそくだらなくても引き込まれてしまう、B級映画の教科書のような作品でした。
何をいうならば、全体がまとまりすぎているし、ロマンティックすぎて、B級映画らしいはじけた感じが足りないところでしょうか。キャラクターはいいんだけれど、プロットがちょっと甘ったるい気がしました。