パイナップル・ツアーズ
2003/8/26
1992年,日本,118分
- 監督
- 真喜屋力
- 中江裕司
- 當間早志
- 原案
- 真喜屋力
- 中江裕司
- 當間早志
- 脚本
- 真喜屋力
- 撮影
- 一之瀬正史
- 音楽
- 照屋林賢
- 出演
- 兼島麗子
- 利重剛
- 洞口依子
- 照屋林助
- 平良とみ
- 藤木勇人
沖縄は具良間島を舞台として繰り広げられる3話オムニバス。第1話「麗子おばさん」は声が出なくなってしまった歌手の麗子が娘を連れて島に里帰りをし、ユタにその原因を突き止めてもらうという話。第2話「春子とヒデヨシ」はヤマトからやってきた青年ヒデヨシと島の娘春子を引っ付けようとする島の人たちの話。第3話「爆弾小僧」は島をリゾート化しようとやってきた富士菊ちょうちんグループの杉本が島に埋まっている不発弾に1億円の懸賞金をかけるという話。
3人の監督が全く違う傾向の3話の物語を取るというオムニバスらしいオムニバス。『ナビィの恋』をヒットさせ、いまや沖縄映画の代名詞ともなった中江裕司監督の劇場デビュー作でもある。
第1話から第3話までかなり対照的な傾向の作品が三つ、という感じ。
まず、第1話は全体的な印象として素人くささがある。その印象を生み出しているのはなにか「おもしろい」映像を作り出そうというあからさまな姿勢にあるように思える。たとえば同じ服装をした双子(?)が画面に並んで登場したり、突然人が降ってくるように画面に登場したり、なにか珍しく面白い、観客を驚かせようという意図がある。それ自体は悪くないのだけれど、全体からそのおかしなシーンが浮いてしまっている印象があるのが知ろうとくささを感じさせてしまう要因になっているだろう。なにか、「シマ」の不思議さを表現しようと躍起になって、その不思議さばかりが浮き出てきて物語としての面白みがそがれてしまっているように気がする。
第2話はそれと比べると非常にうまくまとまっている。その最大の理由はヒデヨシというよそ者の視点を中心にすえたということだろう。ただの「シマ」の物語ではなく、よそ者がシマに入っていったときに感じる齟齬のようなものを物語の中心にすえることで、それを見る観客(よそ者)が入り込みやすくなっている。よそ者にはわからない謎めいた“シロミキヨ”なるものを登場させることでミステリーというほどではないが謎解きの要素が出てきて、物語も転がりやすくなる。沖縄の離島というものを舞台にしていながら、正統な物語から外れることなく誰もが楽しめる映画にうまくまとめた。そんな印象が残る作品。
第3話はさらに一転、映像派・サウンド派とでも言いたくなるようなイメージ先行の映像作品となっている。序盤にパンクバンド“爆弾小僧”の演奏シーンがあり、演奏は全くもって下手くそなんだけれど、その映像はMTVにありがちなような映像になる。それをきっかけとしてサウンドが映像にかぶさり、テンポも何か音楽を感じさせるようなものになる。感じとしてはいちばん現代的な感じがするが、完成度としてはいまいち。映画のパーツパーツがばらばらな感じがして、第2話のまとまりと比べるとどうも散漫な印象を受けてしまう。
それぞれの話を見るとそうなるが、全体としてはそれぞれのエピソードのスタイルがばらばらな割にはなかなかうまくまとまった感じがする。沖縄映画が流行になったのは『ナビィの恋』と『豚の報い』が公開された1999年以来という感じだが、それに先駆けること7年、流行の礎として地味だけれどいい映画があったのだと思った。