密告の代償
2003/9/6
Protection
2001年,カナダ,98分
- 監督
- ジョン・フリン
- 脚本
- ジャック・ケリー
- 撮影
- マーク・シャルルボワ
- 音楽
- リチャード・マーヴィン
- 出演
- スティーヴン・ボールドウィン
- ピーター・ギャラガー
- アーロン・タガー
ある土地の利権をめぐって対立する2つのグループ、その1つで重要な地位を占めるサルは相手側のボスに不利な証言をすることで自らの罪を逃れ、証人保護プログラムを受けることになった。妻子とともに名を変え別の町に移り住んだサルは隣人となったテッドの勧めで彼の不動産業を手伝い始める…
キャストも物語もすべてが地味なギャング映画。しかし、地味だからといって馬鹿にしてはいけない。地味なものは地味なりに、あるいは地味だからこその面白さがあるということをこの映画は見せてくれる。
普通マフィア映画というと、ドラッグとか銃とかの密売なんかをするものだけれど、この映画は産業廃棄物をめぐる土地の利権という非常に地味な設定、銃撃戦なんかはあるけれどそれもなんだか地味。それもこれもカナダ映画だからなのか、映画の内容としてはハリウッド映画と対して変わらないはずなのに、雰囲気は全く違う感じ。しかし、この地味さこそがこの映画の面白さといえる。
主演のふたりもとても地味。しかしうまい。スティーヴン・ボールドウィンなんてボールドウィン一家の一人というだけで、果たして何の映画に出ていたのか記憶にないくらいだけれど、この映画では非常に印象的。無表情で何を考えているのかわからない男を見事に演じている。
何を考えているのかわからないといえば、この主人公のサルが何を考えているかわからないというのがこの映画の一番すごい部分といえるだろう。普通なら、新しい友人(?)とのふれあいで人間としてのやさしさを取り戻していくとか、あるいはそのようなふれあいにもかかわらず冷血漢であり続けるという内面的な展開がプロットの中心になりそうなものだけれど、この映画ではそんな内面をうかがい知ることはできない。
しかし、最後まで見てみると、証人保護プログラムを受けるということはそのような冷たさ(強さ)を必要とするものなのだと納得が行くだけに、その無表情に徹するスティーヴン・ボールドウィンはなかなかのものだと思った。
他方のピーター・ギャラガーのほうはナチュラルな演技だけれど、サルとは逆に熱血漢という役柄が意外な設定で面白い。ギャングであるサルよりもただの不動産業者であるテッドのほうが激昂型だというのは、不思議なようだが、実はその方がリアリティがあるような気もする。
そんな人物設定をはじめとして、地味ながらも、あるいは地味であるからこそリアリティを感じさせる演出が光った佳作という感じ。