明日に向って撃て!
2003/9/7
Butch Cassidy and the Sundance Kid
1969年,アメリカ,112分
- 監督
- ジョージ・ロイ・ヒル
- 脚本
- ウィリアム・ゴールドマン
- 撮影
- コンラッド・L・ホール
- 音楽
- バート・バカラック
- 出演
- ポール・ニューマン
- ロバート・レッドフォード
- キャサリン・ロス
“壁の穴強盗団”のリーダーであるブッチ・キャシディと早撃ちで鳴らすガンマンのサンダンス・キッド、ふたりは強盗団を率いて強盗を繰り返す。しかし、いつものように列車強盗をしたある日、底にもう一代の汽車が現れ、その貨車から飛び出してきたトラッカーの一段に追われる羽目に。追っ手の手から逃げ延びようと走り続ける彼らだったが…
西部史に名高いブッチとサンダンスを描いたあまりに有名な“新しい”西部劇の傑作。
これはとても不思議な映画だ。西部劇ではあるのだけれど、西部劇の盛り上がりはあまりない。唐突にミュージッククリップのような映像が挿入されたり、セピアの静止画のスライドショーが始まったりする。だからこそ面白いといえばその通りだし、だからこそ“新しい”西部劇なのだ。しかし、不思議だ。焦点が定まらないというか、いったい何が映画の中心なのかわからない。言い方を変えれば「オフビート」ということができるのかもしれない。「オフビート」というといわゆるアメリカン・ニューシネマの代名詞であるがこの映画はそんな映画とも違う。「オフビート」であるにもかかわらず、ロマンティックで感傷的なのだ。ブッチとサンダンスとエッタの関係も表面的にはドライさを保っているが、そこには内面のロマンティックな関係性が滲み出る。
完全に西部劇であるのだけれど、西部的の面白さというよりは、3人のロマンティックなドラマこそが面白いのがこの映画。西部劇となると白人男性の古きよきアメリカノスタルジー映画となってしまうのだけれど、この映画はそうなってしまうことをかろうじて避け、一般受けする映画になりえた。特に主演2人の格好よさや、バート・バカラックの「雨にぬれても」のキャッチーなメロディは女性にも訴えかける。
なので、映画史に残る名作というよりは誰もがいつでも楽しめる永遠のヒット作という感じである。
ところで、この映画を見て思ったのは西部劇のアクションシーンのあっけなさ。どんなに引き伸ばしても勝負は拳銃の一発で決まる。アメリカ映画にとっての西部劇が日本映画にとっての時代劇のようなものだと考えるなら、そのアクションシーンは非常に対照的である。この映画のラストシーンはかなり長い銃撃戦のシーンであるが、そこで中心的に描かれているのはアクション自体というよりはブッチとサンダンスの関係性である。これに対して日本の時代劇の大立ち回りというのはアクション自体の面白さで長いシーンを見せる。
現在のアクションへとつながる系譜にはもう1つ香港のカンフー映画があって、これは時代劇よりさらにアクション自体の面白さで見せる。というより映画がすべてアクションシーンだといってもいいものになる。
だからどうだということもないけれど、最近のワイヤーアクションなんかを見ると、アクションシーンはどんどん引き伸ばされているだけに、西部劇の一瞬ですべてが決まるアクションに何か新鮮さを感じた。