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荒馬と女

2003/9/11
The Misfits
1961年,アメリカ,124分

監督
ジョン・ヒューストン
脚本
アーサー・ミラー
撮影
ラッセル・メティ
音楽
アレックス・ノース
出演
クラーク・ゲイブル
マリリン・モンロー
モンゴメリー・クリフト
イーライ・ウォラック
セルマ・リッター
preview
 離婚のためネヴァダ州ノリにやってきたロズリンは何組もの離婚を見てきたイザベルの世話になっていた。イザベルのところに車の修理にやってきた修理工のギドとカフェで再会したロズリンはその親友であるカウボーイのゲイに紹介される。そしてふたりに誘われるがままに郊外にあるギドの所有する空き家にいってみることになった。そしてそこが気に入ったロズリンはそのままそこにすむことにしたのだが…
 アーサー・ミラーのシナリオに監督はジョン・ヒューストン。さらにマリリン・モンローにクラーク・ゲーブルとまさにオールスターという感じの西部劇。しかし、クラーク・ゲーブル、マリリン・モンローともにこの作品が遺作となってしまった。
review
 まず話題には事欠かない映画である。
 なんといっても話題の中心はマリリン・モンローである。この時、夫でありこの映画の脚本家でもあるアーサー・ミラーとの不仲が公然の秘密となり、ジョン・F・ケネディとの交際がささやかれてもいた。
 そして、共演した憧れの存在クラーク・ゲーブルが撮影終了直後心臓麻痺で亡くなり、その原因がマリリンのせいで撮影が長引いたことに帰されるとマリリンはひどい抑うつ状態に陥り、自殺未遂を図った。
 さらにこの映画が公開された61年、アーサー・ミラーとは離婚、マリリン自身は精神病院に入院するという事態になった。そして翌年帰らぬ人となり、この作品が遺作となってしまった。

 そのように話題が先行してしまうと、映画としてはどうかなという感じになってしまうが、この映画は面白い。ざっと見るとどうも物語がもたもたしているし、モンローも少々とうがたって、50年代のお色気ムンムンとは行かない。
 しかし、実に興味深い映画であると私は思う。それはこの登場人物たちがあまりにばらばらであるからだ。最初はロズリンとゲイのまっとうなラブ・ストーリーとして展開していきそうに思える。そしてそこにパースという青年が割り込んできてちょっとひねった物語に、さらにギドもロズリンに思いを寄せていて、その4人の間で物語が展開されていきそうな感じになる。
 しかし、ロズリンはそのような展開にははまらず、何を考えているのかよくわからない。ゲイに惹かれてはいるけれど、どこかよそよそしい。この映画の主人公はクラーク・ゲーブルで、基本的に西部劇という固いではあるけれど、ロズリンの役どころはカウボーイに惚れる女などでは決してない。ロズリンはゲイに惚れていながらも、彼のカウボーイという要素を知るにつれどんどん彼から離れていくように思える。
 このような物語がもたもたと展開していくわけだが、この物語はジョン・ヒューストンによる巧妙な西部劇との決別であるのだと思う。この映画でカウボーイは(比喩的な意味で)死に、西部劇は終わる。ジョン・ヒューストンがこれ以降西部劇を撮っていないというわけではないが、この映画の時点で彼はもう西部劇は不可能だと考えていたのではないか? 現実的にカウボーイがまだいるのかどうかということはわからないが、映画の中でも言われているようにカウボーイという存在は立ち行かなくなり、ノスタルジーの対象でしかなくなってしまった。そんな中で西部劇をとり続けることの無意味さに気づいていたヒューストンはこの映画によって西部劇と決別しようとしていたのではないか。
 西部劇はもうノスタルジーの対象としてしか存在しえなくなってしまった。現実を映す鏡としては存在しえなくなってしまった。そんなことを語りかけてきているように思える。
 クラーク・ゲーブルもマリリン・モンローもそして西部劇もこの映画で死んでしまった。悲しくもあり、哀愁も感じさせるが、最後の輝きというに足る輝きを放ってもいると思う。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ60~80年代

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