弾丸ランナー
2003/9/20
1996年,日本,82分
- 監督
- サブ
- 脚本
- サブ
- 撮影
- 栗山修司
- 音楽
- 岡本大介
- 出演
- 田口トモロヲ
- DIAMONDO☆YUKAI
- 堤真一
- 磨赤兒
- 大杉漣
- 堀部圭亮
- 白石ひとみ
- サブ
職場でも、恋人にも「何をやってもだめ」といわれた男が、でっかいことをやって彼らを見返してやろうと綿密な銀行強盗の計画を立てた。逃走車も用意し、時間の計算もし、予行演習もして、拳銃も用意して、いよいよ実行の日、目的の銀行まで来たところでマスクを忘れたことに気づく。マスクを買おうと近くのコンビニに入るのだが…
Vシネマを中心に活躍してきた俳優サブの初監督作品。Vシネ出身らしいB級テイストとスピード感がなかなか。
アクションなのかと思ってみていたら完全なコメディだったわけですが、それにしても非常にB級っぽい。基本的にアイデア勝負というか、とりあえずずっと走ってたら面白いだろうくらいの考えで、田口トモロヲといういいキャラクターを主役に持ってくる。本当にそれだけで90分の映画を撮ってしまったという映画である。だから90分もやっとという感じで、終盤は前半にあったスピード感がどんどんなくなっていって、なんだか展開も読め読めの普通の映画になってしまった。長編映画とするにはもうひとネタというか、話にもうひとひねりほしかったところ。これをもし45分の映画にしたなら、かなり面白いものになったのだと思う。特に映像や音に工夫があるわけでもなく、まったく斬新といえるものはない。それでも鑑賞に耐えうるのは、全体を通しても、一つ一つのシーンを考えても、平均点は取れているからだろう。
ただ、この映画の根本にある日常と非日常の関係性は興味を引く。この物語はつまり、偶然から思いもかけないことがどんどんと起こってくるという非日常的な物語なのである。主人公はまあ自分から銀行強盗をしようと思ったわけだから、自ら非日常に飛び込もうとしていたわけだけれど、走ることになってしまったのは偶然によるもの。この映画にとって重要なのは全速力で走り続けるということであって、そこに偶然にも巻き込まれてしまったということに意味があるのだから、主人公もまたそのような非日常に偶然に巻き込まれてしまったのだということができる。
そのようにして飛び込んだ非日常の経験の中で彼らは自分の日常というものを見つめなおす。それは日常の中にあっては気づかないような自分の姿。まるで自分を外側から見ているかのような気持ちで自分自身の日常を見つめることができる。非日常の持つそのような機能をこの映画はすっきりと見せてくれる。
それに最終的に気づくのはコンビニの店員についての結末を見てのことだ。日常と非日常とは断絶したものではなく、つながったものとしてある。多くの映画は日常か非日常のどちらかを描くだけだけれど、この映画はそのふたつのあいだの行き来の問題を描いていて、それが面白いのだと思う。