MONDAY マンデイ
2003/9/22
1999年,日本,100分
- 監督
- サブ
- 脚本
- サブ
- 撮影
- 佐藤和人
- 音楽
- 渋谷慶一郎
- 出演
- 堤真一
- 松雪泰子
- 大河内奈々子
- 安藤正信
- 大杉漣
- 西田尚美
- 麿赤兒
- 塩見三省
- 田口トモロヲ
- 寺島進
- 松重豊
見知らぬホテルの一室で目覚めた男。自分が何をしていたのかまったく覚えていないサラリーマンの高木は内ポケットから出てきたお清めの塩を見て、自分がお通夜に出席していたことを思い出す。そのお通夜の席で、医者からの電話で死んだ男のパースメイカーの電源がまだ入っており、それをきらなければならないと告げられる。なぜか高木がその役を任され、実行するのだが…
高木が前日の出来事を少しずつ思い出していくという形式をとる破天荒なブラック・コメディ。次々とありえないような出来事の記憶をよみがえらせていくという展開が面白い。
この映画は完全なブラックコメディである。このサブという監督はなんとなく作風が伊丹十三に似ている気がする。ストーリーテリングがなかなか巧妙で、基本的な路線はブラックコメディ。そこになかなか面白いアイデアを入れていって、映画を練っていく。完全にコメディというわけでもないけれど、アクションとか、そういった分類に入るわけでもない。その何のジャンルとも付かないジャンルとしての伊丹十三ジャンルにサブはカテゴライズされるような気がする。そういえば伊丹十三も俳優出身。
この映画は特にその傾向が顕著で、観客をぐいぐい引き込んでいく物語展開と、基本的に「ありえね~よ」というネタでクスリとさせるブラックユーモア。堤真一を中心として固められた“サブ”世界の住人たちが繰り広げる摩訶不思議な物語。現実的には摩訶不思議であるはずなのだけれど、映画の中では一つの世界が確立されてしまっているのでそれほど不思議に思えない。そんな映画の作り方がこの映画には見える。
なので、この映画は基本的にエンターテインメントである。映画なんておもしろければそれでいい。そんな単純明快な映画である。終盤で何かメッセージじみたものが出てきて、それはそれで引っかかる人には引っかかり、何かを考えるきっかけにはなるけれど、そんなメッセージをいいたいがために映画を撮ったというよりは、映画としてエンターテインメントとして展開力を持たせるためにそんなメッセージを込めることが意味を持っているのだろう。
ただ、メッセージ自体にはそれほど意味はないにしても、この映画で語られていることが社会への批評眼になっていることには注目してもいいかもしれない。なんかいろいろと小難しい理屈をこねて人々(大衆)をだまそうとしている政治家やら何やらの輩が何を言ったって、それは現実を何も変えやしない。何も変えやしないのは映画だって同じだけれど、同じように変えやしないんだったら楽しいほうがいいんじゃない? ということを言い、考えるやつは何も小難しいことをいわれなくたって自分で考えるよ。 と言う。深読みしていけばそんなことも言っているような気もしてくる。
と、なかなか面白いことを言っているわけですが、それでもあくまでメッセージ性を強く感じることができないのは、結末の弱さゆえでしょうか。結末を言うわけにはいかないので何なんですが、結局のところ結末もブラックと言うか、シニカルと言うか、そんな感じで終わってしまう。いろいろと考えさせてくれるところまで進みながら、最終的には「何も変えやしない」というところに戻ってしまう。そんな印象があって、それがもう一歩弱いかなという気がしましたが、その結末を見て、「やはりこれはエンターテインメントなのだ」とも思ったわけなので、結末としてアリと言えばアリなのです。私としては「アリと言えばアリだけど、もう少し頑張ってみてもよかったんじゃないのー」というのが最終的な感想です。