荒野の用心棒
2003/9/25
Per un Pungo di Dollari
1964年,イタリア,100分
- 監督
- ボブ・ロバートソン
- 原作
- 黒澤明
- 菊島隆三
- 脚本
- ボブ・ロバートソン
- ドゥッチオ・テッサリ
- ビクトル・A・カテナ
- ジェイム・コマス
- 撮影
- ジャック・ダルマース
- 音楽
- エンニオ・モリコーネ
- 出演
- クリント・イーストウッド
- ジャン・マリア・ヴォロンテ
- マリアンヌ・ユーチ
- マリアンネ・コッホ
1872年、ニューメキシコのある町にジョーという腕利きのガンマンが現れる。旅の途中でその町を二分する一味の一つモラレス一家の手下にからかわれ、ロバを撃たれたジョーは町の酒場のオヤジに町の情勢を聞き、モラレス一家の手下4人を撃ち殺し、もう一方のロホ兄弟のところで雇われることにする。そんな時、メキシコの軍隊が町にやってくるが…
クリント・イーストウッドを一躍スターの座に押し上げたマカロニ・ウェスタンの名作。監督のボブ・ロバートソン(セルジオ・レオーネ)もこの作品によってマカロニ・ウェスタンを代表する監督となった。
後年、黒澤明の『用心棒』の盗作であるとして東宝が告訴し、勝訴したといういわくつきの作品でもある。
どうしても黒澤の『用心棒』と比べてみてしまうわけだが、まずとても似ているというしかない。確かに物語の重要な部分で違いはあるけれど、黒澤の『用心棒』をまったく意識せずにこの物語を考えたというのは、どう考えてもありえない。
物語よりもキャラクターの設定がまったく同じなので、どうしてもそれぞれの人物を黒澤の登場人物に置き換えてみてしまう。「あれが仲代達矢か」というふうに。
なかなか難しいけれど『用心棒』を忘れてこの映画を見てみると、面白い映画であることは間違いない。一人の男が町を牛耳るふたつの勢力と渡り合うというヒーローもの、その男はあまりに格好よく、冷徹であるようでいながらも人情味がある。イーストウッドがスターダムにのし上がったというのもよくわかる。 が、やはりこれは『用心棒』のコピーそのものでしかなく、私としてはオリジナルのほうがどう見ても面白いように思えてしまう。剣の戦いと銃の戦いではその風景がまったく違うし、敵との関係も変わってくる。物語のほうはといえば、そもそもそれほど日本的ではなかった物語だけに西部劇に翻案しやすかったのか、見事にはまってはいるが、どこか味わいが足りないという気がしてしまう。
などなど、なかなか公正な評価を下すのは難しくなってしまうわけですが、たぶん、この『荒野の用心棒』のほうが面白いと思う人もいるわけで、それはきっと見る順番にもよってくるだろうし、見返してみるとぜんぜん印象が違ってきたり、他の作品を見ていくことによっても代わってくるだろうし。ある意味では映画の不思議さというものがこのふたつの作品にあらわれているのかなという気もします。基本的には同じ物語であるふたつの映画が見る人によって、見る環境によって、見る時期によって、それまでに見てきた映画によって、見え方がどんどん変わってくる。そんなことを確かめるためにも、たまに2本の作品を見比べて見ると面白いのかもしれません。