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CUBE

2003/9/28
Cube
1997年,カナダ,91分

監督
ヴィンチェンゾ・ナタリ
脚本
ヴィンチェンゾ・ナタリ
アンドレ・ビジェリク
グレーム・マンソン
撮影
デレク・ロジャース
スコット・スミス
音楽
マーク・コーヴェン
出演
モーリス・ディーン・ウィン
ニコール・デ・ボア
デヴィッド・ヒューレット
ニッキー・グァダーニ
アンドリュー・ミラー
preview
 謎の立方体で目覚めた男がまったく同じつくりの隣の部屋に入ったとたん、罠にはまって賽の目に切り刻まれてしまう。同じ立方体の中で出会う6人の男女、だれも何故そこにいて、そこがどこなのかわからない。6つの面にあるどのドアをあけても壁の色の違う同じ立方体があるだけの空間に閉じ込められた6人は、罠を避けながらとにかく出口を求めてさ迷い歩くが…
 カナダの恐るべ新鋭監督ヴィンチェンゾ・ナタリが低予算で作り上げた密室サイコスリラー、限定された空間と限定された登場人物で繰り広げられるとにもかくにも恐怖の連続のドラマは一見の価値あり。
review
 私がまず感心したのはこの映画が映画を作るうえでの最小限の要素によってできているということだ。わずか6人(厳密には7人)の出演者、ただの立方体の箱でしかないセット、それを見事に組み合わせて、壮大な空間をスクリーンの中に作り上げ、そこを果てしなく旅する6人の壮大な物語を作り上げる。
 人間対キューブ、中にいるもの対外にいるものという単純な構図ではなく、内部の人たちのあいだにも対立要素を忍ばせていく。そして映画のすべてに論理的な辻褄を求める徹底的にストイックな作り方は、理論的な謎解きという要素を持つこの映画、恐怖で覆われた映画に、ほんの少しの安心感を与える。
 この映画は非常に怖い映画ではあるけれど、すべてが“数字”によって、論理的に組み立てられているために、人智を超えることはないという安心感がどこかにある。わたしはそれがこの映画の一番面白いところだと思った。怖さというのは基本的に予期できないもの、人智を超えたものに対して抱かれるものであるはずなのに、この映画はそのようなものとしてはじめは現われる恐怖も結局は人間に作られたものであって、解明されうるものであり続ける。これは西洋的な理知主義を徹底的に突き詰めたものであって、科学というものをあり方をホラー映画という形に凝縮したものであると考えることすらできるのではないかと思う。昔は不意に襲ってくるものだった台風がやってくることをいくつかの「鍵」によって予知するということと、この映画で隣の部屋にトラップがあるかどうかを判断するということはどこかでパラレルなものであるように思える。

 この映画でキューブに閉じ込められる6人とはある意味では人類そのものであり、キューブとは未知の宇宙そのものなのである。少ない手がかりからその全容を解明し、アカルイミライを目指す。見ているときはとにかく怖くて面白いだけだったけれど、見終わって振り返ってみると、そんな物語が根底にあったのではないかと思う。そして、そのような物語があるからこそ、この映画はただの怖い映画ではなく、面白い映画でありえたのだとも思う。
 ただ怖いだけならば、たとえば日本のホラー映画の怖さのほうが数倍上のような気がする。それは怨念とか亡霊とか狂人とか、人智を超えた理不尽なところにその怖さがあるからで、そのような怖さにはいつかコントロールできるという安心感がない。克服できるかもしれないが、それは人間がコントロールできたからというよりは、恐怖の源泉である何かのほうがいなくなるとかそういうことを決めたからに過ぎないことが多い。そのようなときには結局恐怖は拭われず、見終わってみてもつかの間の安心感しか得られない。
 この映画の結末については、映画の楽しみを損なわないようにここでは何も言いません。
Database参照
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監督順: 
国別・年順: カナダ

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