X-MEN2
2003/10/6
X2
2003年,アメリカ,125分
- 監督
- ブライアン・シンガー
- 原作
- スタン・リー
- 脚本
- マイケル・ドハティ
- ダニエル・P・ハリス
- ブライアン・シンガー
- 撮影
- ニュートン・トーマス・サイジェル
- 音楽
- ジョン・オットマン
- 出演
- パトリック・スチュワート
- ヒュー・ジャックマン
- イアン・マッケラン
- ハリー・ベリー
- ファムケ・ヤンセン
- ジェームズ・マースデン
- ブライアン・コックス
ホワイトハウスでミュータントによる大統領暗殺未遂事件が発生、再びミュータント排斥論が世の中を席巻する。それを防ぐためX-MENは犯人を先に探し出し、事情を聞くが、そのミュータントは記憶がないと言う。他方で政府でミュータント対策を行う軍事化学者のストライカーはクスリによって、幽閉されているマグニートーからX-MENの情報を引き出していた…
人類との共存を目指すミュータントの精鋭軍団X-MENの活躍を描いたシリーズ第2作。スタッフ、キャストともに前作とほぼ同じメンバーが顔をそろえ、高いクオリティを保った。アメリカン・コミックが原作ということで、子供向けと思われがちだが、むしろ大人が見たほうが楽しめる質の高い作品。
コンセプトとしては前作から特に変化はないですが、前作を受けてという所で物語を進ませやすくなっているという気はしました。そのおかげで全体的にクオリティもあがっているのではないかと。CGなんかは相変わらずすばらしいとは言いがたい感じですが、この作品に限っては映像のすごさが絶対的に必要というわけではないので、気にするほどのことではないです。
基本的にアクション映画なわけですが、実はそのあたりはあまり重要ではなく、人間とミュータントの関係性、ヒーローとして現われるX-MENの二重性などが重要になってくるのだと思います。そして、そこが一番面白い。
この映画(たぶん原作も)の基本にあるのは、人間の「他者」に対する意識のあり方。ミュータントという「他者」に出会った人間がどのような行動をとるのか、これまでことごとく「他者」を拒絶してきた人間が本当に「他者」と和解することができるのか、という問題意識がそこにはある。
この作品では特に、他者への嫌悪感が個人的な憎悪と結びついたとき、そのひとりの他者から「他者」全体へと憎悪の対象がずれていくそのような傾向を描く。これは歴史上果てしなく繰り返されてきた人間の抗争の原因であり、それは今も世界中のあらゆるところで抗争/戦争を生み出している。ミュータントはそのように憎悪の対象となりうる「他者」の究極的な形として映画に現われてくるのだ。
私たちは人間だけれども、この映画は基本的にミュータントの立場に立ってみるように出来ている。大げさな言い方をすれば、そこでわれわれの自我は引き裂かれ、これまでとは違う位置から問題のありかを眺めることができるようになる。簡単に言ってしまえば、人間から見れば「他者」の塊でしかないミュータントという集合が、あくまでも個人の集まりであり、「他者」という言葉で表すことができるものでは決してないということである。
この作品の段階ではそこまででとどまっているが、このミュータント内部のさまざまな人間関係(ミュータント関係?)を眺めていると、ヒーロー/正義の味方として現われているはずのX-MENも決して完全ではなく、アンチ・ヒーローとして登場してきたはずのブラザーフッド(マグニートー側のミュータントたち)にもX-MENにはない重要な要素があるような気がする。そこが深まっていくと、人間-ミュータント/X-MEN-ブラザーフッドという二重の二項対立構造にとどまらない図式が見えてきて、面白くなっていくのではないかと思う。
このまま順調に進んでいけば、そのように面白くなっていくと思うので、3,4と続編を作っていって欲しいものです。