ムーラン・ルージュ
2003/10/9
Moulin Rouge !
2001年,アメリカ,138分
- 監督
- バズ・ラーマン
- 脚本
- バズ・ラーマン
- クレイグ・ピアーズ
- 撮影
- ドナルド・M・マカルパイン
- 音楽
- クレイグ・アームストロング
- マリウス・デ・ヴリーズ
- スティーヴ・ヒッチコック
- 出演
- ニコール・キッドマン
- ユアン・マクレガー
- リチャード・ロクスバーグ
- ジョン・レグイザモ
- ジム・ブロードベント
- カイリー・ミノーグ
安アパートでタイプライターに向う青年、彼は最愛の人を失った。そのサティーンに出会ったのは1年前、青年クリスチャンがボヘミアンにあこがれてパリにやってきたその時だった。安アパートの上の階の怪しげな男たちに連れられてナイトクラブ“ムーラン・ルージュ”へ行ったとき、サティーンとオーナーのジドラーがクリスチャンを大富豪の公爵と勘違いしたことからその恋ははじまった。
ビートルズ、エルトン・ジョンをはじめとするポピュラーミュージックの名曲をふんだんに盛り込んで作られたポップミュージカル。ユアン・マクレガーは歌がうまい!
さてまず、私はどうもミュージカルは苦手のようです。見ていて嫌だとか、恥ずかしいとかそういうことはないんですが、どうも乗っていけない。一つ一つの歌なんかは面白く見ることができるんですが、どうしてもそれを含めた流れにうまく乗れない。そんな感じがしながらいつも見ています。
そのような好みの問題(私だけの問題ではなく、ミュージカルはイマイチね…と思っている人は結構いるはず)も含めて、この映画で興味深いところと言えば、ニコール・キッドマンの顔がどんだけ変わっているのか、ということと、ユアン・マクレガーの歌がかなりうまいということ。ニコール・キッドマンの顔の話はもういい!という感じなのでしませんが、この映画では目の色がすごく澄んだ水色で、それは整形というわけではないと思いますが、それだけでかの印象がすごく変わって見えました。で、ユアン・マクレガーのほうは吹き替えではないそうで、プロ顔負けというくらいにかなりうまい。これのおかげでこの映画はかなり見れるものになっていると思います。
そのあたりがなかなか面白いところで、あとはミュージカルの王道というか、19世紀末の舞台に現代のポップというミスマッチが面白いというほかは、非常にオーソドックスな歌って踊るラブ・ストーリーという感じです。
なぜミュージカルにイマイチ乗れないかということを、この映画に沿って考えてみると、なんといっても物語の展開が遅い。そりゃあ、要所要所で歌って踊っているわけですから、物語の進行は遅くなってしまうわけです。私はどうしても映画に物語を求めてしまうので、物語のテンポに乗っていけないと映画にも乗っていけない。そういう意味で、進行の遅いミュージカルはなかなか乗れるものがないということです。
それでも、歌や踊りのシーン自体は嫌いではないので、そのシーンがうまい具合に物語に絡んで、物語に深みを与えるような含蓄のあるものとして配置されていれば、キットしっくりと来ると思うのですが、なかなかそういう映画には出会えないもの。この映画の場合は結局のところポピュラーミュージックのいいとこ取りという感じで、それが物語に深みを与えるという役割は果たせていない。だからやはりどうしても乗っていけないということです。
ということですが、この映画の面白い点は舞台を映画化しようという姿勢ではなくて、逆に映画を舞台化しようとでもいう姿勢が感じられるということ。この映画のパリの街のセットはあまりに芝居(舞台)じみていて、まったくリアリティがない。建物の配置やら、照明の当て方やら、どこをとっても、奥行きのない舞台上で演じられているようにしか見えない。このあたりのリアリティのなさは、映画を潔くファンタジー化しているという意味で面白いと思いました。