おばあちゃんの家
2003/11/6
Jibeuro
2003年,韓国,87分
- 監督
- イ・ジャンヒャン
- 脚本
- イ・ジャンヒャン
- 撮影
- ユン・ホンシク
- 音楽
- キム・デホン
- キム・ヤンイー
- 出演
- キム・ウルブン
- ユ・スンホ
- ミン・ギョンフン
- イム・ウンギョン
- トン・ヒョフィ
少年サンウは母に連れられ電車に揺られバスに揺られてド田舎までやってくる。それは母が17歳のときに家出してきた祖母の家。母は仕事が見つかるまでの2ヶ月間息子を預かってくれと耳も聞こえず、口も利けない母に頼んで帰っていく。一人残されたサンウは持ってきたスパムの缶詰を食べ、コーラを飲み、ゲームをして過ごすばかりで、祖母を無視していたが…
『美術館の隣の動物園』のイ・ジョンヒャンによる感動物語。田舎の風景とおばあちゃんというのは卑怯なほどに郷愁を誘う舞台設定である。感涙の涙を流し、心温まること請け合い。
とてもいい話しだし、細部も面白い。おばあちゃんは可愛い。
おばあちゃんが押入れから取り出す飴はいったいいつからそこにあったのか、サンウの子供らしい行動も面白い。自分は何でもできるんだと思っているが、じっさいはほんの子供に過ぎず、自分では思い通りにならないことばかり。それを怒りにしておばあちゃんにぶつけるが、おばあちゃんには応えない。そして、都会の人の目に映る田舎というのは面白いものである。ド田舎のどん詰まりのようなところに住んでいるおばあちゃんとその隣人たちにとっては都会である「町」の田舎っぽさがまた面白い。
おばあちゃんが可愛い。そもそも見た目が可愛いのだが、その動作もコミカルですらある。耳が聞こえないという設定だが、どう考えても聞こえているように思えてしまうのはプロの役者ではない仕方なさなのだろうか。このおばあちゃんがプロの役者ではないというのは一目瞭然という気がするが、村人たちも本当にここの村人たちであるらしい。そのあたりは何かキアロスタミをはじめとするイラン映画みたいな雰囲気を感じるが、別にドキュメンタリー的な撮り方をしているわけではなく、ほんの撮影エピソードに過ぎないから、映画にとって特に意味のあることではないと思う。
物語りもとてもいい話だ。ラストあたりはなかざるを得ないという感じで、会場のあちらこちらからはすすり泣く声が。しかし、私はこの物語で泣いてしまうのはなんだか負けた気がして嫌だったので泣かないことにした。泣こうと思えば泣けたのだが、このような「感動しただろ!」と声高に言ってくる映画を見ると、それに対抗して涙をこらえたくなるものなのだ。
この映画は物語によって感動させるというよりも、感動させるために物語があるような映画だ。本当に物語を語ろうとするならば、サンウの変化のほうをもっと緻密に描くべきだったのではないだろうか。あそこまで極端に拒否反応を示すところから変化を描くにしては理由付けがあいまいすぎる。
私なんかは子供なんてのは案外素直なもんであっという間に田舎に溶け込んでしまうし、おばあちゃんも好きになってしまうものだと思うのだが、この映画では最後の最後まで本当には変わらない。あるいはむしろサンウの変わりようがあまりに突然のことであるように映ってしまうのだ。
それは何か結末ありきで、そのために必要な場面だけをつないだ物語と私には映る。心がこもっていないというか、登場人物たち(特にサンウ)の心理が画面から伝わってこないのだ。子供の演技にそれだけのものを求めるのもなんだが、そこは監督の力量、監督の力量があれば子供でも心がこもったように映すことは出来るはずだ。
そのあたりから、映画全体的などうも作り物じみたものになってしまい、細部の面白さや感動が全体的な印象とはなりえなかったのが残念だ。