更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー

ベアーズ・キス

2003/11/13
Bear's Kiss
2002年,カナダ,98分

監督
セルゲイ・ボドロフ
脚本
セルゲイ・ボドロフ
撮影
ハヴィエル・ペレス・グロペ
音楽
ギア・カンチェリ
出演
レベッカ・リリエベリ
セルゲイ・ボドロフJr.
マウリツィオ・ドナドーニ
ヨアヒム・クロール
preview
 シベリアの森の中で撃ち殺された熊。その熊には小熊がいた。サーカスで母親と空中ブランコの芸をする少女ローラが両親とともにサーカス用の動物を飼うために訪れた動物売りのキャラバンの中にその小熊はいた。その小熊をひと目で気に入ったローラに、父親のマルコはその小熊を買い与える。ローラは熊をミーシャと名づけ、べったりと過ごすようになった。しかし、本当の父親ではないマルコのふがいなさに嫌気がさした母親のカルメンはサーカスを出て行くことを決意する。ミーシャと離れたくないローラは一緒に行こうという母の申し出を断って、逆に「本当のお母さんじゃないんでしょ?」という疑問を投げかける…
 『コーカサスの虜』のセルゲイ・ボドロフによるファンタジー映画。全体的な雰囲気はよく、観後感もなかなかだが、映画のリズムが独特でなじめない人にはなじめないだろうと思う。
review
 この映画はカナダ映画だが、監督のボドロフはロシア人である。出演者たちはスウェーデン、ロシア、イタリア、ドイツとヨーロッパ各地から集められている。そんな映画であるが、この映画にはロシア映画らしい寂寥感がある。それは寒々とした風景といったような即物的なものではないことは、その寂寥感がスペインに行っても薄れないことからわかる。この寂寥感というのがこの映画の全体を支配する要素になる。決して明るくはなれないそんな物語。これはこの映画のかわいらしいようなイメージとはかけ離れたものであり、観客はある意味で裏切られるのかもしれない。
 この映画はどうもリズムが悪い。セリフとセリフの間とか、カットとカットのつながりとか、そういった映画のリズムを作る構造が見慣れているような映画とは違い、なかなか馴染めない。そのあたりでこの映画はなかなかしっくりとこないということになる。
 そして、もう一つしっくりこないのが、ミーシャである。熊が人になったりすること自体はそれほど不自然ではないというか、映画の要素としては問題ないと思うのだが、人になったミーシャ(演じるのは監督の息子)の行動や表情がどうもわからない。彼が熊であるから人間には読めないような表情や行動をするという設定であるとも考えられるが、ミーシャの心理が読めないがゆえに私はミーシャとローラの関係性にも入り込むことができず、物語に入り込むことができなかった。人になったときのいろいろの辻褄の合わなさもある。これはたいして問題になることではないのだが、ミーシャのわかりにくさをあわせ考えてみると、教会でローラが発した「現実なのか幻なのかわからない」というような言葉が浮き上がってくる。ミーシャが人になることが現実であるということが映画の大前提としてあり、人間になったミーシャに他の人たちも普通に接しているのだから、それは現実であるに違いないのだけれど、しかし、さまざまな齟齬を見てみると、果たしてこれは本当に現実なのかという疑問がもたげる。
 このような疑問に再び立ち返らせるのは何故なのか? そのことによって映画からは離れた部分でさまざまなことを考えるきっかけにはなるかもしれないが、純粋に映画を楽しむためにはむしろ邪魔になる要素なのかもしれないと思えるので、やはりどうもしっくりこないのだ。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: カナダ

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ